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映画・演劇のレビュー

演団劇箱『Poison Prison Persons』

2007-07-16 21:07:21 | 演劇
 前半はドキドキしながら、見れた。テンポよく、お話が進んでいく。この芝居のペースに乗っかってジェットコースターにでも乗ってるように主人公の少女、りん(白亜)に降りかかる災難を見ていく。いったいこのお話はどこに向かっていくのかも、読めないような展開が素晴らしい。あれよあれよという間にどんどん先に行く。よく解らないけど、ずっと舞台を見つめていたくなる。そんな芝居だ。

 そして、後半。彼女の頭に葉っぱが生えてきて、光合成少女となる、というあっと驚く新しい展開をみせる。実を言うとここから芝居は加速度をつけて、どんどん世界が広がっていかなくてはならないのに、ここから説明過多になり、まとめに入ってしまうのが惜しい。それまでの話にオチがつき、ネタバレしていくばかりで、面白くない。もっと自由にドラマの翼を広げて欲しかった。ラストもあまりに当たり前のところに落ち着いてしまう。

 ひとりぼっちになってしまった少女は、自分がつまらないお願いをしたから、そのことで両親を死なしてしまったという罪の意識を抱いて生きている。そんな気持ちを原罪として抱え、今までの人生を生きてきた。だから、人に対して強いことは何も言えない。彼女は、すべての状況を受け入れて生きていくという生き方しかできない。

 そんな少女が自己主張することで、本当の自分を見つけていくというありきたりなドラマでも良かったのだ。なのに、後半はエコロジーとかの方向に行き、個人の問題がおざなりにされていく。とてもきれいに話を収めていくが、そういうことが大事なのではない。少女の内面の問題と世界自体の成り行きを描く2つの物語がひとつに収束していくことで、彼女の心の痛みをどこに収めていくかが大事なのである。それが地球環境をどう変えていくことになるのか。2つの問題はひとつになることで作品自体も完結していくはずだ。人間が光合成を可能にするという事件がまず大事でそこからどういう事態が生じるのか、という方向から話は展開すべきなのに、作り上げた世界観がまるで展開できてない。

 ただのエンタメにはしないという姿勢は買うが、それだけでは足りない。1年間の空白の記憶というのもまるで生かされていない。両親を失ったショックと罪の意識、良心の呵責。ひとりで目立つことなく生きてきたのに世界と向き合わなくてはならなくなる。その時、少女はどう戦うのか。ただ逃げるだけではなく戦闘モードに入った彼女が自分の中の何を守り戦うのか。人類が新しい進化の階段を上っていく時、彼女はどんな役割を演じていくことになるのか。この芝居が描くべき問題はまだまだあったはず。安易なエンディングは欲しくない。

 

 

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