エッセイだが小説並みに面白い、と思ったのが先日読んだ三國 万里子『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』。三国さんのあのエッセイの完成度は凄い。そして同じように本作もまた凄い。でもこれはあんな感じ(純文学の味わい)ではなく、こちらはほんわか(中間小説の感触)している。エッセイなのに、実は小説として十分通用するレベル。
第1章の『上京物語』は彼女が漫画家を目指してひとりで東京に出てきた日々の記録で、中編小説と呼んでもいい。もっと書き足すとちゃんとした長編小説にもなるはず。面白くて、読みやすい。その先どうなる、と思わせる。とても楽しい。これはNHKの朝ドラにしたらいいんじゃないか、と思わせる傑作だ。彼女の漫画も、エッセイも好き。
斜線堂由紀の『君の地球が平らになりますように』も面白い。短編連作だが、この5つの話は4つは別々(ひとつだけ姉妹編)なのにひとつにつながる。いずれも愚かの女の恋心のキビがとても切ない。恋は地獄。こんな男とわかっていても、そんな男が好きでそいつのために地獄行き。でもただの屑男に入れ込む話ではない。これを先日見た映画『恋のいばら』や『そして僕は途方に暮れる』と並べてもいい。同じような感触がある。でも、あの2本の映画以上にこれは過激。
クズ男たちは、それぞれが曲者で、そんな特異体質の男に感応してしまう女たちもそれはそれで仕方ないか、と思わせるのだから凄くないか。タイトルに取り上げた第1話『君の地球が平らになりますように』の男女も、『「彼女と握手する」なら無料』の男女も、『転ばぬ先の獣道』の男女も。(4話のホストはふつうだし、この女たちも。5話は1話の男とその元カノによる番外編)そんなこんなの困った男女に興味津々。実に面白いし、うまい。