いつもながら面白いアイデアを見つけ柔軟に展開する。軽くて、あっさりしている。そして、彼女のエンタメ小説は楽しくて為になる。今回は僕と同世代の男性が主人公だから、余計に感情を乗せやすい。まぁ、彼は会社の社長だから、万年ヒラ社員だった僕とは立場は違うけど、同じ65歳。(僕は数えで65歳だが)彼は10店舗ほどのケーキ屋を展開する会社の社長。ふたりの息子がいる。どちらかを次期社長に選ぶのだが決め手がない。そこにやってくるのが型破りな中小企業診断士北川! 彼のまさかの提案から道が開くというよくあるパターンである。
このケーキ屋さんの話から始まり3話からなる連作だった。2話目はバック屋さん。62歳の女性社長。係累はいないなかでの後継者選び。だけど候補の3人は頼りない。しかもコロナによって会社は青息吐息。たったひとりで会社を大きくしてきたが、この先不安。さぁ,どうなる? これもなかなか面白い。
そして第3話。社長が急逝して買収された包丁会社の話。これだけは社長の話でも、後継者選びの話でもない。さらには先の2篇のような面白さはなく、普通。話の展開もあまり上手くない。北川は活躍しないし。かなりガッカリした。