昨年末に芝居を見に行くと、何度となく坂口修一さんに会った。たまたま同じ芝居を同じ回で見ることになったのだが、そう言えば最近坂口さんの芝居を見ていないよな、なんて思った。だからたまたまこの芝居をチラシで見て、行こうと思っていた。
まず、大阪大学中之島芸術センターによる企画展『ヤスキチ・ムラカミの世界展』を見に行ってきた。写真は好きだから時間がある時、時々見る。サブタイトルに『オーストラリアに生きた写真家・実業家・発明家』とある。ヤスキチ・ムラカミってどんな人なのか、まるで知らなかったから少し気になった。しかも彼を坂口修一が演じる。事前学習としても、見ることにした。なんだかよくわからない人だった。写真はたいしたことはない。当時の記録としては貴重かもしれないが、それだけ。展示室のビデオ作品を見て、なんとなく彼の軌跡を理解する。
ということで、後日の今日(1月19日)初日の芝居を見てきた。台本(この場合は脚本が的確か)は写真家の金森マユ。彼女本人(演じるのは趙清香)がヤスキチ・ムラカミの写真を探して旅する過程が描かれる1時間ほどの小さな芝居。(演出は山口浩章)
ヤスキチの墓を訪れた時、そこにヤスキチ本人が現れてきて、金森と話出すというスタイルでヤスキチの生涯が描かれる。わかりにくい作劇。登場人物は3人だけ。先のふたりにヤスキチの一人目の妻(杉江美生)。芝居は至ってシンプル。ヤスキチという男を紹介することが第一の目標で演劇作品てしてどうこうというものではない。だけど端正で気持ちのいい作品に仕上がっている。もちろんお目当ての坂口修一はいつもながら、上手い。無理なく自然にヤスキチ・ムラカミを演じている。10代でオーストラリアに渡り、1944年、収容所で亡くなった。戦後を見ることなく、客死した。彼は一度だけ、帰ったがそれ以降日本に戻ることはなかった。