昨年の『無名稿 あまがさ』に続く「文豪+無名劇団」のコラボシリーズ第2弾。川端康成のあとに、横光利一という選択はなかなか渋い。作者の中条さんの趣味なのだろうが、今時こんな地味な作家(ごめんなさい!)を取り上げるなんて、なかなかお目が高い。前回に続き短編をモチーフにしたのも正解だろう。長編をアレンジするには、かなりの力技が必要だ。それなら軽い短編を下敷きにして自由に想像力を働かせるほうがいい。
オリジナルに囚われず、でも、オリジナルの要素をしっかり引き継ぎながら自由奔放なイメージの世界をそこに体現する。今回の作品は、もうオリジナルの要素なんかほとんどないのではないか、と思うくらいだ。大胆でいい。でも、それじゃぁ、オリジナルでやれよ、とも思う。インスパイアされたものを奔放に展開するのがこのシリーズの姿勢かもしれないけど、なんだかそこらへんは微妙。
シュールなタッチの原作を解体し、うまく再構成した。時間があっちこっちと行き来する。ここがどこで、今がいつで、そこで彼女たちがどうなるのか。よくわからないまま、お話に引き込まれていく。「機械」という記号が唯一の道しるべとなる。
靴職人の女たちの確執。師匠と弟子の関係というのがなんだか古めかしい。殺しに至るまでの関係性。発想は面白いし、話自体も悪くはないのだが、あまりドキドキしないのはなぜだろうか? 彼女たちの関係から生じる緊張感が伝わらないから、そうなるのだ。象徴的な装置、ドラマの、その先にあるドロドロしたものが、どこに収まることとなるのか。興味深い作りなのに、いささか残念な仕上がりだった。