習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『クローズZERO Ⅱ』

2009-04-13 21:32:19 | 映画
 前作を見た時、ただひたすら喧嘩ばかりしている映画に呆れた。なんだこれ、話ないじゃん、と思った。同時期公開の同じようなタイプの映画である『ワルボロ』のほうが面白いんじゃないか、なんて思ったのが、あの時の正直な感想だ。

 だが、見終えたときの清々しさがなんだか気になった。こんな内容で、あんな映画なのに、である。暗い話で、血が吹き出て、殴り合うばかりで、ありえない、と思った。ここは無法地帯かよ、と思う。警察なんか姿もない。学校には普通の人間は存在しない。みんな狂犬みたいな奴ばかり。たむろしてタバコ吸って、酒飲んで、ごろごろしてるだけ。こいつら学校に何しにいってるのだろうか。確実に言えることは、この学校には先生はいないし、当然授業もない。ここは高校という名のたまり場。そこで次の喧嘩を待つ。「鈴蘭のてっぺんを取る」だなんて言って小競り合いを続ける。やがて最終決戦をむかえる。

 前作で山田孝之に勝って鈴蘭のトップとなった源治(小栗旬)が今度は、鳳仙学園のスキンヘッド軍団と戦う、というのが今回のお話だが、この話自体にはなんら仕掛けはない。前作以上に単純な話だ。それにいかにもなお話だ。だが、この映画が描こうとしたものは、お話自体の魅力ではなく、男と男がただひたすら戦う姿にある。気がついたらなんだかスポーツでも見ている気分にさせられている。不思議だ。そして鳳仙学園との最終決戦は前作を上回る迫力だ。屋上目指して戦い続けるだなんて、なんだかブルース・リーの『死亡遊戯』みたいだ。というか数あるカンフー映画さながらの展開なのだ。

 かっこいい映画だと若い層から支持されているようだが、この突き抜けた映画は僕ら大人が見てもおもしろい。それは彼らの純粋な行動が胸を突くからだ。三池崇史はこの高校生たちの戦いを傍観者でも当事者でもないクールな視点から、捉える。ばかばかしいからそっぽをむいてもいいはずのに、そうは出来ない。三池監督のこの適度な距離感がこの映画を魅力的にした。こんなに熱い映画なのにそれに酔いしれてない。

 それにしても、今時、こんな話で映画が成立するということがまず何よりも奇跡だと思う。不良映画なんて誰が見るのだろうか、と思ったのに、大ヒットである。でも考えればこれと『レッドクリフⅡ』ってなんだか似ている。今、この2作品がダントツの大ヒットである。

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