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映画・演劇のレビュー

『チョコリエッタ』

2015-02-25 20:24:01 | 映画
犬になりたい女の子が主人公。彼女がチョコリエッタ。知世子、だから。大島真寿美の小説を風間詩織が映画化。2時間39分にも及ぶ長尺映画なのに、たいしたストーリーはない。

ひとりの女の子(森川葵)が、この春卒業した高校の映画部の先輩の家にフェリーニの『道』を借りに行く。でも、先輩は一緒にここで見ようと言う。だから、ふたりで見る。そして、ザンパノとジェルソミーナのようにふたりで小さな旅に出る。ただ、それだけのお話。

僕も風間さんと同じように10代の頃、フェリーニが大好きだった。世代的にもよく似ている。たぶん。同じように映画研究部にも入っていた。たくさんの8ミリ映画を作った。だからこれは、あの頃の自分を見ているよう。映画の中で『アマルコルド』や『カサノバ』が引用されたりするけど、マニアックすぎるから、きっとピンとこない観客もいるだろうけど、気にすることはないし、気にも留めない。1970年代、映画に目覚めた頃、僕にとってフェリーニは神さまだった。『フェリーニの道』は古典だったが、『アマルコルド』はリアルタイムで見たのが自慢だ。(『ローマ』は名画座でだったけど)『カサノバ』の頃にはもう熱は褪めていた。それはフェリーニ自身の衰えでもある。

このノスタルジックな映画は、一応、一人の少女が、自立していくまでのお話、というスタイルを取っているけど、実はそうではない。ここには全く未来は見えない。その事実が重く世界を覆う。近未来の設定で、戦争の足音がそこまで迫り、教室には「軍隊へ入ろう」というポスターは貼られていて、でも、政治的背景は一切語られない。そこも不気味だ。

先輩のバイクの後ろに乗り、2人で撮影旅行に出る。その旅先でのスケッチが綴られる。特別なお話がそこにあるわけではない。いつまでも続く映画だ。その長さは退屈ですらある。でも、そのこともこの映画のねらいだ。その先に答えがないことも。何もないのに、なぜかドキドキさせられる。

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