現役中学生が実年齢の中学生を演じる、という当たり前のことが、芝居ではとても新鮮だ。(実はかなり微妙な問題もそこには孕むのだが、)最初は彼女たち3人のおしゃべりシーンからスタートする。それがけっこう長い。残念ながら、そこが弾まないから、乗り切れない。劇団未来の大人の役者が登場すると、その差は歴然となる。しかも、途中から彼女たち中学生の話から、大人の側へとシフトする。それは台本の問題なのだが、安心して見ていられるけど、なんだかはぐらかされた気分にもなる。つたない子供たちに芝居をさせて、でも、それだからこそ、輝く瞬間を提示できたなら、これは素晴らしい芝居になったかもしれない。でも、それだけの実験に踏み出せないのも、事実だろう。
この作品の主人公は中学生の彩香である。だから、彼女の視点からすべてが語られるべきだ。彼女が、担任の先生の申し出にNoと言う。母は混乱する。いじめにあって、ひきこもる兄のことがあるから、事を荒立てたくはない。学校側は彼女の謝罪でいじめはなかった、ということに出来る。うやむやにしてごまかしたい。でも、彩香は断固として謝らないという所存だ。だって、自分は悪くない。取り繕おうとする大人たち。そこから起こる波乱が家族全員の問題を掘り起こす。
お話としてはこの構造で構わない。だが、その時、彼女はいつもそこにいるべきで、こんなにも彼女が不在生まま、いくつものエピソードが進行するべきではない。大人の論理に対して彼女なりに、もまれて、考え直し、でも、自分を引っ込めない。正しいと思ったことは、貫く。子供だから、考えが足らない、とか言わさない。なぜならば、大人たちは自分の考えで行動して失敗しているのだ。「いじめ」の問題に簡単な答えなんかない。そんなものがあるなら、誰も苦労はしない。
こんなにも真正面から「いじめ」の問題へと取り組む作品が作られることは、素晴らしいことだ。しかも、いくつもの世代を巻き込んで、それぞれの問題して描くのもいい。父は職場でいじめにあって、辞めている。今はタクシーの運転手をしているが、ゆくゆくは独立して個人タクシーをしたい、と思っている。長男は宅浪をしている。高校時代にいじめにあって、それからはひきこもり。長女は高校生だが、クラブの中でいじめにあっている。彼女の友人との関係もぎくしゃくしている。びっくりするくらいに、みんながみんな同じような問題を抱えたままだ。
そして、彩香。クラスの男の子に「死ね」と言ったから、謝罪しろ、と彼の両親から詰め寄られている。だが、そういう言葉の表面だけの問題ではない。物事を表層的に捉えて、それだけで解決しようとする。そんなことだから、いじめなんかなくならない。管理する側は「いじめゼロの学校」という看板を守るために何でもかんでもうやむやにして揉み消す。現実問題として、本気で向き合わない。
彩香の大叔母が戦争中満州からの引き上げで体験した出来事が語られる。彼女の視点から「いじめ」について語られるのだ。そこがお話の核となる。時代を経ても変わらない。自分の問題として抱えて、解決するしかない。だが、そこで大事になるのは周囲の協力と援助だ。この作品が提示する答えは単純すぎる。だが、その単純さの中にこそ、大切なものがある。
こういうまじめな作品は嫌いではない。ただ、あまりにストレートすぎて、少したじろぐ。大きな問題はやはり彩香の立ち位置だ。そこが曖昧になるから、作品は一貫性を欠く。ただ、テーマは揺らがない。そのぶれのない姿勢は素晴らしいのだが。
この作品の主人公は中学生の彩香である。だから、彼女の視点からすべてが語られるべきだ。彼女が、担任の先生の申し出にNoと言う。母は混乱する。いじめにあって、ひきこもる兄のことがあるから、事を荒立てたくはない。学校側は彼女の謝罪でいじめはなかった、ということに出来る。うやむやにしてごまかしたい。でも、彩香は断固として謝らないという所存だ。だって、自分は悪くない。取り繕おうとする大人たち。そこから起こる波乱が家族全員の問題を掘り起こす。
お話としてはこの構造で構わない。だが、その時、彼女はいつもそこにいるべきで、こんなにも彼女が不在生まま、いくつものエピソードが進行するべきではない。大人の論理に対して彼女なりに、もまれて、考え直し、でも、自分を引っ込めない。正しいと思ったことは、貫く。子供だから、考えが足らない、とか言わさない。なぜならば、大人たちは自分の考えで行動して失敗しているのだ。「いじめ」の問題に簡単な答えなんかない。そんなものがあるなら、誰も苦労はしない。
こんなにも真正面から「いじめ」の問題へと取り組む作品が作られることは、素晴らしいことだ。しかも、いくつもの世代を巻き込んで、それぞれの問題して描くのもいい。父は職場でいじめにあって、辞めている。今はタクシーの運転手をしているが、ゆくゆくは独立して個人タクシーをしたい、と思っている。長男は宅浪をしている。高校時代にいじめにあって、それからはひきこもり。長女は高校生だが、クラブの中でいじめにあっている。彼女の友人との関係もぎくしゃくしている。びっくりするくらいに、みんながみんな同じような問題を抱えたままだ。
そして、彩香。クラスの男の子に「死ね」と言ったから、謝罪しろ、と彼の両親から詰め寄られている。だが、そういう言葉の表面だけの問題ではない。物事を表層的に捉えて、それだけで解決しようとする。そんなことだから、いじめなんかなくならない。管理する側は「いじめゼロの学校」という看板を守るために何でもかんでもうやむやにして揉み消す。現実問題として、本気で向き合わない。
彩香の大叔母が戦争中満州からの引き上げで体験した出来事が語られる。彼女の視点から「いじめ」について語られるのだ。そこがお話の核となる。時代を経ても変わらない。自分の問題として抱えて、解決するしかない。だが、そこで大事になるのは周囲の協力と援助だ。この作品が提示する答えは単純すぎる。だが、その単純さの中にこそ、大切なものがある。
こういうまじめな作品は嫌いではない。ただ、あまりにストレートすぎて、少したじろぐ。大きな問題はやはり彩香の立ち位置だ。そこが曖昧になるから、作品は一貫性を欠く。ただ、テーマは揺らがない。そのぶれのない姿勢は素晴らしいのだが。