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映画・演劇のレビュー

LINX'S ~03 (ゼロサン)②

2011-11-26 21:34:24 | 演劇
 Aプロの4作品は見事なバランスで構成配列がなされてある。まず、初体験の匿名劇壇(『救世主』)である。これが予想を上回る収穫だった。まるで期待しないで見たので、驚きも大きい。話自体も、あのビジュアルも、インパクトは大きい。舞台装置といったって、あれはただの脚立である。だが、その上に女性が乗っていて、彼女が纏うマントが脚立の下にまで及ぶ。ただそれだけで、圧倒的な存在感がある。舞台中央で彼女はほほえむだけだ。最初から最後まで一切しゃべらない。登場人物たちはその巨人(そう、彼女は舞台上で巨人となるのである!)を見上げることになる。家族を皆殺しにした男は、その巨人を見る。彼だけにそれは見える。だが、同じように家族を皆殺しにした女がいる。やはり彼女にもそれが見える。芝居はここから始まる。たった20分ほどの短編なのだがそのイマジネーションの広がりは、豊穣な舞台をここに出現させる。不条理劇を醒めた目で見つめる。これは作家が書いた台本の世界の話で、作家が書けばどんなことでも現実になる。劇作家とその友人(?)の会話が劇中劇である家族皆殺しの男女の話と交錯する。やがてそれが入り混じり、作家が書く戯曲を友人が書き足すことで、世界はどんどんとんでもない方向に進んでいく。現実と虚構を上手く組み合わせ不思議な世界を現出させる。その時、先に書いた巨人の女のシュールさがアクセントとなりこの芝居にリアリティーを与えるのだ。今回の9本で一番の傑作だ。

 月曜劇団『月曜劇団の会議は踊る』は、いつもの西川さやか的世界をコンパクトに見せ、初めての人にこの劇団の魅力をしっかり伝えることに成功している。劇団員の3人のみで、その濃密な彼らの舞台を表現し、彼らの演劇観のようなものまで感じさせる。

 伏兵コード『常吠ゆ』はこれもまた、いつもの稲田真理さんの芝居そのものだ。こういうイベント企画なのに全力投球で、自分の世界を展開する。暗くて怖いドロドロした内面世界をリアルに描く私小説だ。兄と妹。閉ざされた世界。そこにやってくる外部のものの予感。それに怯える。海辺の寂れた町。古い小さな家。そこに世界から取り残されて潜む2人。膨大な借金を抱え、もうどうしようもない。なぜ、そんなことになるのかは、少しずつ語られる。死んだ母、そしてここにはいない父、卓袱台で頭を抱える兄。この濃密な世界に圧倒させる。

 最後はMay『将棋王』。これはただひたすら楽しい。まるで中国の『戦国策』のワンエピソードのような話。こういうイベント上演にぴったりの演目だ。観客を巻き込んでの歌あり踊りありのマダン劇。観客はこの世界を堪能させられる。

 Bプロの4本は予想した通りのパターンで、安心して見られるプログラムになっていた。彗星マジック『死語の世界』はもうひとひねり欲しい。いつもながらのファンタジーで、気持ちよく見せられるのだが、これでは少し物足りない。

 笑いの内閣の2本立『太陽の一族』『太陽に起立』は、かなり思い切ったブラックなコメディーで、危険な香りが漂う。やばいのではないか、というギリギリのラインをちゃんと踏み越えている。(ということは、やばい、ということだ!)こういうコメディーをぬけぬけと見せるって、凄い。おもしろかった。

 ババロワーズ『AUTUMN LEAVES』は女性4人のコメディー。秋らしいお話ということらしいが、高瀬さんの「秋らしい」だから、普通じゃない。でも、ちょっとおとなしすぎる気がする。まぁ、笑いの内閣の後なのでそう思うのかも。

 ゲキバカ『4匹のゲキバカ』もコメディー。そうか、BプロがAプロより単調だったのはコメディーが続くからだ。石田1967さんをモデルにした男を主人公にしたドタバタ。楽屋落ちでしかない。もっと過激なものを期待したのだが、残念。

 最後にプレミアム・ゲストのテノヒラサイズが登場した。短編に於いても、というか、短編の方がその個性を充分に発揮できるのが、この集団だろう。『テノヒラサイズの吸血鬼』は、単純なオチだが楽しい。いかにもテノヒラサイズ、って感じの展開で、これもまた彼らのショーケースとして、充分だろう。

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1 コメント

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匿名劇壇の福谷です (匿名劇壇)
2011-11-27 22:52:52
この度はご来場頂きまして誠にありがとうございました。ありがたい感想に胸が震えております。
当方は学生劇団ですが、今後も活動していく所存でございますので、名前だけでも頭に留めて頂ければ幸いでございます。五月半ば、本公演を予定しております。そちらにも、お暇があればぜひ足をお運びくださいませ。
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