50代の男が仕事をやめて主夫になる、というストーリーに心惹かれて、(自分もこの4月から仕事をやめて主夫をしている)読み始めたのだが、主人公はこの男ではなく、高校生の娘のほうで、田舎の祖母のもとに引っ越した家族のお話だった。期待したようなお話しではなかったけど、反対に期待以上に楽しいお話でそんな意外性に感謝。自分の想像とまるで違った展開にまんまと乗せられた。娘は最初は父親のことを恥ずかしく思うが、与えられた環境を素直に受け止めていくうちに思いもしない楽しさに出会うことになる。やがてバラバラだった家族が祖母との生活(娘にとっては曾祖母)を通して、4人家族がそれぞれ自分らしい生き方を手にしていく。そんな姿が描かれる群像劇。
短編連作スタイルで各章ごとに主人公は変わっていくのだが、6つのお話で長編になっている。娘の話が中心であることには変わりない。曾祖母は昔ながらの神さまの視点からみんなにアドバイスを与え、そのことで、みんなは結果的に生きていく知恵を授かる。なんか、いいなぁ、と思う。橋の下で拾われてきた子、昔ながらの家にある縁側のこととか、髪の伸びる人形、腹の虫とか疳の虫とか、よく昔言っていたことのひとつひとつが祖母を通してよみがえる。よくわかんないけど、神さまは僕たちを守ってくれているのか、となんとなく思う。
田舎の家に引っ越して、そこで暮らすことで今までの自分とは違う自分になれる、という、まぁ、よくあるパターンなのだけれども、読んでいて実に楽しい作品。