力作だと思う。それだけにとても惜しい。これだけたくさんの役者たちを集め、前代未聞のスペクタクルを見せようとした。その意気込みは十分伝わってくる。3時間でも足りないボリュームを2時間20分に仕立てたのも、悪くない。だけど、それでもまだ、たくさんすぎるキャストの交通整理が出来てない。
主人公は2人の刑事で彼らが事件を追うというよくあるパターンのはず。もっとふたりに絞り込んでお話を展開したならよかったのに、あれもこれもと詰め込みすぎた。
いつも通り林遊眠が主人公なのに最初は彼女が全体の中に埋もれてしまっていて、精彩を欠く。彼女とバディを組む久保健太との関係もパターンの域から出ないから、彼らにスポットが当たらない。それよりも今起きている恐るべき事態の全容がまず前面に出る。それが台本の作り方なのだから仕方ないけど、日本中を揺るがすスケールの大きな事件を前面にして、事態をどう収拾するのかを作品の要にした以上、仕方がないことかもしれないけど、バランスが悪い。
内容としては、デビット・フィンチャーの『セブン』やジョナサン・デミの『羊たちの沈黙』とか、あのタイプの猟奇的殺人もの刑事アクションなのだから、主人公の2人の刑事と犯人の対決に焦点を絞り込んだ方がよかった。大人数による集団劇にしたため、お話があちこちに散らばりすぎて、なかなか話が進まない。劇場型犯罪を視覚的に演出する大作仕様の劇作りを目指した以上仕方がないことかもしれないけど、なかなか核心に迫らないのに、犯人探しはあってなく終わる。
さらにはあっと驚くどんでん返しも、単純すぎて、それでいいの? と思うくらい。ラストの真犯人の内面に迫っていく部分も押しが足りない。彼女の心の闇が描き切れていない。日本全土をパニックに叩き込んだ大事件の結末としては弱い。