今年も大阪アジアン映画祭が開催された。昨年この映画祭で見た『星空』は僕にとって昨年見た映画のベストワンになった。今年も興味深い映画が満載で、どれを見るか、かなり迷ったけど、台湾映画を中心にして、4本チョイスした。もちろんすべてでも、見たいのだが、お金も時間もないから、しかも、仕事は忙しいし、他にも見るべきものや、するべきことがたくさんあったから、今の僕にはこのくらいが限界だ。(うちの嫁さんは、他のことを犠牲にして10本見た!)
ということで、一番期待していたこの映画から書く。実を言うと、思ったほど、テンションは上がらなかった。大好き、ではなく、興味深い、という次元で、なんだか客観的に見てしまったのだ。それはこの映画の姿勢なのかもしれない。あるいは僕が乗り切れなかった、かも。でも、これはこれでかなりよく出来た映画だったと思う。(なんだかこれって、奥歯に物が挟まったような物言いだな)
この作品は、当日舞台挨拶に登場した監督(女性)とプロデュサー(男性)の高校時代を描いた映画である。そのことは映画の後のQ&Aで知った。なるほど、と思った。この映画の微妙な距離感の秘密はそこにあったのだろう。「90%は実話です。」「私は双子で」なんていう話が2人の口から飛び出した。そのうち、はたと思いついた。主人公の女の子と男の子のモデルは完全に今いる目の前の2人ではないか、と! 大柄でちょっとふとっちょの優しそうな男性と、意志の強そうな女性コンビが、この映画のプロデュサーと監督なのだ。そう気付いた時、なんだかとても幸せな気分になれた。こんなふうにして、高校時代を過ごして2人でこうして今も一緒にいる。同じ仕事に就いて、ともに生きている。彼らはなんだか理想のカップルに見える。まぁ、それって僕のただの妄想でしかないのかもしれないけど。
監督は主人公のポーである。彼女の17歳が描かれる。プロデュサーは、彼女に憧れる男の子だ。(彼女が、ではない。そこもまた微妙なのだ)まだ若い彼らがそんな自分たちの青春時代を振り返って、それを高雄の母校を舞台にして、映画化する。なんだか夢のような話ではないか。2人はまだ、30代前半くらいである。これが初めての映画、そしてこの映画で昨年の台北映画祭グランプリを受賞した。もちろん映画は大ヒット。すべてがハッピーエンド。こんな幸福があるんだな、と思うと、人生もまんざらでもないな、と思う。まぁ、他人のことだけど。
この映画の魅力は、そんな舞台裏ではなく、この映画自体がこんな背景を持つくせに、というか、持つゆえに、浮足立っていないとこだ。自分たちだけで盛り上がって観客をおいてけぼりにされたなら、最悪なのだが、それはない。まず第一にこの作品は、とてもかわいい映画である。その事実は否定できないし、すべきではない。そこにこそ、この映画の存在意義があるからだ。だが、それだけでは、意味はない。この映画がいいのは、双子の女の子の気持ちをとてもリアルに描けてあることにある。もちろん、監督が双子の一人だから、そうなるのだが、そこに説得力がないと、つまらない。内容自体は、あまりにたわいないもので、ことさら語るべきものはない。表面的にはただのかわいい青春映画でしかない。
主人公4人の恋愛模様が描かれる。男女2人ずつ、2組のカップルのすれ違う気持ちがとても気持ちよく描かれる。双子だから、ということ。今までなら全く見分けのつかない双子の話って、それを利用して入れ替わったりする、とかいうのがパターンだったが、これはそんな映画の中のようなお話には興味ない。当然、ファンタジーではなく、シリアスに描くのだ。
自分はみんなと同じようにひとりの人間なのに、双子というだけで、そんなふうには受け止めてもらえない。彼女の苦しみって、本人にとってはとても切実な問題なのだ。目の前に鏡を置いたように自分とそっくりな人間がいる。同じ高校に行き、同じ家に住み、同じクラブに入って、自分よりちょっと成績は優秀。比較なんかされたくはないけど、みんな2人を比較する。そんな運命をなぜ自分だけ受け入れなくてはならないのか。大好きな男の子は、自分と妹とを間違ってしまうし。
どこにでもある普通の高校生活。でも、それがとても輝いて描かれていく。かけがえのない時間がここにはある。それをちゃんと距離を保ちながら見せる。その慎ましさがいい。今の台湾映画はこういうタイプの傑作をどんどん作ってくれるから好きだ。ということで、書いているうちに、この映画が見たときよりも好きになってきた。
ということで、一番期待していたこの映画から書く。実を言うと、思ったほど、テンションは上がらなかった。大好き、ではなく、興味深い、という次元で、なんだか客観的に見てしまったのだ。それはこの映画の姿勢なのかもしれない。あるいは僕が乗り切れなかった、かも。でも、これはこれでかなりよく出来た映画だったと思う。(なんだかこれって、奥歯に物が挟まったような物言いだな)
この作品は、当日舞台挨拶に登場した監督(女性)とプロデュサー(男性)の高校時代を描いた映画である。そのことは映画の後のQ&Aで知った。なるほど、と思った。この映画の微妙な距離感の秘密はそこにあったのだろう。「90%は実話です。」「私は双子で」なんていう話が2人の口から飛び出した。そのうち、はたと思いついた。主人公の女の子と男の子のモデルは完全に今いる目の前の2人ではないか、と! 大柄でちょっとふとっちょの優しそうな男性と、意志の強そうな女性コンビが、この映画のプロデュサーと監督なのだ。そう気付いた時、なんだかとても幸せな気分になれた。こんなふうにして、高校時代を過ごして2人でこうして今も一緒にいる。同じ仕事に就いて、ともに生きている。彼らはなんだか理想のカップルに見える。まぁ、それって僕のただの妄想でしかないのかもしれないけど。
監督は主人公のポーである。彼女の17歳が描かれる。プロデュサーは、彼女に憧れる男の子だ。(彼女が、ではない。そこもまた微妙なのだ)まだ若い彼らがそんな自分たちの青春時代を振り返って、それを高雄の母校を舞台にして、映画化する。なんだか夢のような話ではないか。2人はまだ、30代前半くらいである。これが初めての映画、そしてこの映画で昨年の台北映画祭グランプリを受賞した。もちろん映画は大ヒット。すべてがハッピーエンド。こんな幸福があるんだな、と思うと、人生もまんざらでもないな、と思う。まぁ、他人のことだけど。
この映画の魅力は、そんな舞台裏ではなく、この映画自体がこんな背景を持つくせに、というか、持つゆえに、浮足立っていないとこだ。自分たちだけで盛り上がって観客をおいてけぼりにされたなら、最悪なのだが、それはない。まず第一にこの作品は、とてもかわいい映画である。その事実は否定できないし、すべきではない。そこにこそ、この映画の存在意義があるからだ。だが、それだけでは、意味はない。この映画がいいのは、双子の女の子の気持ちをとてもリアルに描けてあることにある。もちろん、監督が双子の一人だから、そうなるのだが、そこに説得力がないと、つまらない。内容自体は、あまりにたわいないもので、ことさら語るべきものはない。表面的にはただのかわいい青春映画でしかない。
主人公4人の恋愛模様が描かれる。男女2人ずつ、2組のカップルのすれ違う気持ちがとても気持ちよく描かれる。双子だから、ということ。今までなら全く見分けのつかない双子の話って、それを利用して入れ替わったりする、とかいうのがパターンだったが、これはそんな映画の中のようなお話には興味ない。当然、ファンタジーではなく、シリアスに描くのだ。
自分はみんなと同じようにひとりの人間なのに、双子というだけで、そんなふうには受け止めてもらえない。彼女の苦しみって、本人にとってはとても切実な問題なのだ。目の前に鏡を置いたように自分とそっくりな人間がいる。同じ高校に行き、同じ家に住み、同じクラブに入って、自分よりちょっと成績は優秀。比較なんかされたくはないけど、みんな2人を比較する。そんな運命をなぜ自分だけ受け入れなくてはならないのか。大好きな男の子は、自分と妹とを間違ってしまうし。
どこにでもある普通の高校生活。でも、それがとても輝いて描かれていく。かけがえのない時間がここにはある。それをちゃんと距離を保ちながら見せる。その慎ましさがいい。今の台湾映画はこういうタイプの傑作をどんどん作ってくれるから好きだ。ということで、書いているうちに、この映画が見たときよりも好きになってきた。