こういうエンタメ小説に嵌るなんて、予想もしなかった。『東京バンドワゴン』シリーズの小路幸也なんで、かなり面白いだろう事は読む前からわかってはいたのだが、僕はミステリは嫌いだし、「偶然手にした2億円を巡るトラブル」なんていうありきたりで、ありそうもない話とつき合うほど暇ではない。400頁もの小説を読んで、ただおもしろかった、で終わるのなら、読まない。
最初は嘘くさい話だなぁ、とちょっと及び腰で読み始めた。50時間ずっと起きていて、その後20時間眠り続ける病気を抱えたゲームプランナーが主人公。彼がバイトで探偵まがいの尾行をしていて、事件に巻き込まれる。謎の人物ナタネさんの登場から一気に話が加速していき、あれよあれよという間にどんどん話に中に引き込まれていく。小路幸也はほんとうに上手い。彼の作るハートウォーミングは、こういうミステリ・タッチの小説でも見事に機能する。だいたい彼の作る家族の話にしても、考えればいつもミステリ・タッチだったし。
出てくる人たちがみんな優しいのがいい。頭の中だけで作られた話ではなく、ここには熱いハートがある。だから、読まされてしまう。東野圭吾の数少ない傑作(嫌らしい書き方だ)『流星の絆』を思わせる。3兄妹の話というところだけではなく、家族の絆がテーマであるところも、似ている。奇想天外な展開もだ。終盤の20頁で急転直下に話が収束するのはちょっとご都合主義だが、それでも上手い作り方だ。話をどんどん広げて、ちゃんと辻褄を合わせる。見事である。ちょっと大甘な終わり方だが、そこになんだかほっとさせられる。こういうセンチメンタルは嫌いではない。
自分を守ってくれる人がいる。誰よりも大事に思ってくれる人がいる。だから、自分も誰かを、きっと誰よりも大事に思う。そんなふうにして、人は生きている。なんだか生きていてよかった、と思える。そんな素敵な小説だ。
最初は嘘くさい話だなぁ、とちょっと及び腰で読み始めた。50時間ずっと起きていて、その後20時間眠り続ける病気を抱えたゲームプランナーが主人公。彼がバイトで探偵まがいの尾行をしていて、事件に巻き込まれる。謎の人物ナタネさんの登場から一気に話が加速していき、あれよあれよという間にどんどん話に中に引き込まれていく。小路幸也はほんとうに上手い。彼の作るハートウォーミングは、こういうミステリ・タッチの小説でも見事に機能する。だいたい彼の作る家族の話にしても、考えればいつもミステリ・タッチだったし。
出てくる人たちがみんな優しいのがいい。頭の中だけで作られた話ではなく、ここには熱いハートがある。だから、読まされてしまう。東野圭吾の数少ない傑作(嫌らしい書き方だ)『流星の絆』を思わせる。3兄妹の話というところだけではなく、家族の絆がテーマであるところも、似ている。奇想天外な展開もだ。終盤の20頁で急転直下に話が収束するのはちょっとご都合主義だが、それでも上手い作り方だ。話をどんどん広げて、ちゃんと辻褄を合わせる。見事である。ちょっと大甘な終わり方だが、そこになんだかほっとさせられる。こういうセンチメンタルは嫌いではない。
自分を守ってくれる人がいる。誰よりも大事に思ってくれる人がいる。だから、自分も誰かを、きっと誰よりも大事に思う。そんなふうにして、人は生きている。なんだか生きていてよかった、と思える。そんな素敵な小説だ。