なんと震災ものである。まぁ、このタイトルを見れば、誰でもわかることだろう。先日のカラ/フル『発するチカラ』に続いてこれも第2期震災ものとでも呼ぶべき作品だ。第1期はまず、距離感がテーマになっていた。自分たちは当事者ではないという負い目のようなものがある。でも、自分たちが受けた衝撃を伝えたい。この震災で受けたショックは大きい。そのことを形にして伝えたい、という感じだった。だが、ここにきて、状況は少し、変化を見せる。今一歩、踏み出した作品の登場なのである。今回のアプローチは、震災自体をテーマの中心に据えて、ドラマを編み上げる、ということだ。
最初、青木さんは不謹慎にも見えるようなネタでどんどん攻めてくる。こんなことを言ってもいいのか、と思えるようなことを平気でがんがん見せてくれる。観客の「クロムならもっとやってくれるだろう」という期待に応えるため、わざと過剰なサービスをしている。いつものように変なダンスシーンがあり、噛み合わない会話と、無駄に高いテンションで、ドラマが進んでいく。震災を扱いながらも、とても不謹慎なまでもの平常心でおちょくったような話が何度となく変化をつけて繰り返される。
竜巻に襲われて、甚大な被害を被った隣町から被災した受刑者たちがやってくる。刑務所が倒壊して、そこを脱出した彼らが避難してくるのだ。だが、彼らが囚人であるということだけで、この町の人たちは恐怖を感じる。まぁ、凶悪な犯罪者もいるだろうし、それは当然のリアクションだろう。だが、この設定を持ちながらも、話は思いのほか広がっていかない。ちょっとしたパンデミックのように噂が広がりパニックになっていく、というドラマなのかと思ったが、そうではなく、警察にやってきた女と警官のやりとりを中心にして、とても狭い範囲のドラマに終始する。ひき逃げを目撃した女と、ひき逃げなんかにかまっていられない警官の話からスタートして、ひき逃げされた女や、ひき逃げされたその女を助けて自宅に監禁した男なんかが、入り乱れて、隣町から来た囚人も含めたドタバタが演じられる。
最後にはすべてが一人の女の妄想の中へと収斂していく、というお決まりのパターンになる。竜巻に襲われて倒壊した精神を病んだ女を収容する病院に、囚人がやってきて、彼女の現実と妄想がぐるぐるしていく、という話がだんだん大きな比重で語られていく。これはレイプされ、心を病んだどんちゃん(彼女は最初から、目立たないように密かに登場していた!)の妄想世界のお話なのだ。震災ものというパッケージングの中で、青木さんは久々にとてもわかりやすい構造の芝居を自由に作る。それぞれが抱える傷みなんて、他者にはわからない。それは震災であろうと、交通事故であろうと変わりないことだ。
今回、震災というテーマのもと、青木さんは自分の十八番を何の規制も設けず、勝手気ままにのびのびと作っている。そのやりたい放題は見ていて気持ちがいい。それは今回は最初から「震災を扱う」という枷があったからこそ、その反動として手に入れた自由なのではないか。
ここで扱う問題はとてもデリケートな題材だからこそ、細心の注意を払って、表面的には好き放題に見えるような作品としてまとめたのではないか。そう言う意味でも、これはとても繊細な青木さんらしい細心の心配りのなされた作品になっている。
最初、青木さんは不謹慎にも見えるようなネタでどんどん攻めてくる。こんなことを言ってもいいのか、と思えるようなことを平気でがんがん見せてくれる。観客の「クロムならもっとやってくれるだろう」という期待に応えるため、わざと過剰なサービスをしている。いつものように変なダンスシーンがあり、噛み合わない会話と、無駄に高いテンションで、ドラマが進んでいく。震災を扱いながらも、とても不謹慎なまでもの平常心でおちょくったような話が何度となく変化をつけて繰り返される。
竜巻に襲われて、甚大な被害を被った隣町から被災した受刑者たちがやってくる。刑務所が倒壊して、そこを脱出した彼らが避難してくるのだ。だが、彼らが囚人であるということだけで、この町の人たちは恐怖を感じる。まぁ、凶悪な犯罪者もいるだろうし、それは当然のリアクションだろう。だが、この設定を持ちながらも、話は思いのほか広がっていかない。ちょっとしたパンデミックのように噂が広がりパニックになっていく、というドラマなのかと思ったが、そうではなく、警察にやってきた女と警官のやりとりを中心にして、とても狭い範囲のドラマに終始する。ひき逃げを目撃した女と、ひき逃げなんかにかまっていられない警官の話からスタートして、ひき逃げされた女や、ひき逃げされたその女を助けて自宅に監禁した男なんかが、入り乱れて、隣町から来た囚人も含めたドタバタが演じられる。
最後にはすべてが一人の女の妄想の中へと収斂していく、というお決まりのパターンになる。竜巻に襲われて倒壊した精神を病んだ女を収容する病院に、囚人がやってきて、彼女の現実と妄想がぐるぐるしていく、という話がだんだん大きな比重で語られていく。これはレイプされ、心を病んだどんちゃん(彼女は最初から、目立たないように密かに登場していた!)の妄想世界のお話なのだ。震災ものというパッケージングの中で、青木さんは久々にとてもわかりやすい構造の芝居を自由に作る。それぞれが抱える傷みなんて、他者にはわからない。それは震災であろうと、交通事故であろうと変わりないことだ。
今回、震災というテーマのもと、青木さんは自分の十八番を何の規制も設けず、勝手気ままにのびのびと作っている。そのやりたい放題は見ていて気持ちがいい。それは今回は最初から「震災を扱う」という枷があったからこそ、その反動として手に入れた自由なのではないか。
ここで扱う問題はとてもデリケートな題材だからこそ、細心の注意を払って、表面的には好き放題に見えるような作品としてまとめたのではないか。そう言う意味でも、これはとても繊細な青木さんらしい細心の心配りのなされた作品になっている。