習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『まる』

2024-10-25 14:59:00 | 映画

昨年の『波紋』に引き続き荻上直子が監督・脚本した最新作である。この作品に堂本剛が『金田一少年の事件簿』以来なんと27年振りで単独主演した。あれはTVからの派生作品だし、『ファンタスティポ』は国分太一とのダブル主演だから本格的な映画主演はこれが初めてである。しかもこれは監督が当て書きした「初めに堂本剛ありき」の作品。(綾野剛が共演するダブル剛だし!)100パーセント堂本映画。

だからかもしれないが、今までの荻上監督作品とは全く違うティストの作品に仕上がっている。もちろん前作『波紋』とも違う。これは正体不明のなんだかよくわからない映画である。もちろんそこがこの作品の魅力でもある。だけど確かによくわからないので戸惑うのも事実で、それはまるで『世にも奇妙な物語』の一編を見ているような感じなのだ。2時間の映画なのに短編の感触を抱かせる小さな印象を与える作品である。もちろんそれは敢えてそうしている。意図的に。作品世界を広げない。閉じる。

主人公の沢田は有名なアーチストになるけど、その生活はまるで変わらない。このサクセスストーリーは実態がなく夢の中の出来事のような感じ。リアリティが(わざと)ないように作られている。少し気味が悪い不思議な感触を狙っているみたいだ。

まるを描いただけで100万円、という(微妙な値段で)買い取るというあり得ない設定。終盤には、画廊で開催されている個展に雪崩れ込んで作品を破壊する吉岡里帆の過激派。最初から最後まで、いろいろなところが(敢えて)ツッコミどころ満載。やはりポンコツで居心地の悪い夢を見ている気分。だけど堂本剛はこの世界で戸惑うこともなく浮遊する。彼は自由だ。

この映画は自然体に生きる堂本剛のフェイク・ドキュメンタリーである。そしてそれがありのままの彼を伝える。もちろんそれは並走した荻上直子の心情でもある。掴みどころのないあやふやな真実がそこにはある。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ゆとりですがなにか イン... | トップ | 演劇集団よろずや『オー・マ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。