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映画・演劇のレビュー

『娚の一生』

2015-02-19 21:08:44 | 映画
「娚」と書いて(おとこ)と読ませる。こんなの知らなかった。で、この映画、この大胆なタイトルと、あのポスターが見せる(というか、想像させる)イメージ(あの足舐めである!でも、実のところ卑猥な印象はないな)とはまるで違って、とても穏やかな映画なのだ。それに、別に一生を描くのではないし。しかも、主人公は男(豊川悦司)の方ではなく、女(榮倉奈々)だし。

恋愛に傷つき、(よくある不倫)田舎に戻ってきた30代の女が主人公。祖母の残した家で、ひとりひっそり生きようとする。そこに、中年男がやってくる。離れに居座る。彼は祖母の恋人だったみたい。52歳ということは祖母よりずっと年下。大学教授だという。でも、そんなわけのわからない男と、結果的には同居することになる。これは大人版『跳んだカップル』か。(古いなぁ)

 やがてふたりは心を通い合わせることになる。こんな恋愛映画、誰が見たいと思う? 原作のマンガ(!)は、人気があるのか。こんな地味なマンガ、誰が読むんだ? でも、映画になるということは、それなりに人気があるということか。

でも、映画はとてもいい。すごくいい。2時間、何もない話なのに、スクリーンから目が離せない。ずっと見守り続ける。このひそやかな生き方が好きだ、と思える。人生に疲れた大人の男と女が、彼らが大切にしていた女性(彼の恩師であり、彼女の祖母)の死を通して、出逢う。この隠れ里のような場所で、見知らぬ同士として、いつの間にか、肩寄せ合い、生きていくことになる。そのうち、少しずつ、お互いを大切に思い始める。それだけなのだ。ドラマチックとは程遠い。

先月の『さよなら歌舞伎町』に続いて連続3カ月新作連打の廣木隆一監督は本当に凄い。(来月は『ストロボ・エッジ』だ!)なんでも、きちんと仕立ててしまう。しかも、最近は、はずれなし。

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