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映画・演劇のレビュー

『ルビー・スパークス』

2012-12-30 20:34:55 | 映画
『リトル・ミス・サンシャイン』の監督、ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスがメガホンを取ったロマンチック・コメディー。こういうお話って、今までもいろんなところにあったけど、ちょっとエロ系が多かったが、これはなんともとてもかわいらしくて気持ちのいい作品だった。

 10代で華々しくデビューして、その後ずっとスランプの作家が主人公。彼は異性はもちろん、同性とですら、上手く関わることが出来ない。要するに、他人と付き合うことが出来ないのだ。そんな彼の前に、ある日、自分の書いていた小説の中の少女が現れる。なぜか突然彼女は自分の家にいるのだ。もちろんそんなバカな話、最初は信じない。自分はとうとう頭がおかしくなったのか、と思う。だが、彼女は実在する! しかも、彼女は自分が、作家である彼の妄想の産物だという自分の出自を知らない。

 妄想した少女が現実に現れて、自分の恋人になる。理想の女の子が自分のことだけを好きでいてくれて、彼は生まれて初めて夢のような甘い恋の日々を送ることとなる。だが、そんな幸福がずっと続くわけはない。やがて、彼女が自我を持ち始め、自由に行動しようとする。すると、彼はそれが我慢ならない。なんともバカバカしい男のエゴ! そこで、彼は封印していた小説の続きを書き、自分のことしか考えない女として、彼女を設定し直す。彼女は彼の書いた小説そのままなので、書いた通りに行動するし、彼女の心も自由に操れるのだ。でも、そんなことをしているうちに、虚しくなる。

 うまく人と付き合えない男が、妄想の中で、恋を知り、悩み、お互いに傷つく。話自体はありきたりなのだが、それをとても、爽やかな映画に仕立ててあるから、スクリーンから目が離せない。とても、幸福な気分にさせられる映画だ。ラストのハッピーエンドも含めて、これは等身大の青春映画だと言えるだろう。それほど凄いというわけではないけど、たまたま、こういう珠玉の小品と出会うと、なんだか得をした気分になる。

 ヒロインのルビーを演じたゾーイ・カザンが、とても初々しくてかわいい。彼女はなんとこの映画の脚本も手掛けているし、製作総指揮もしている。その華奢なルックスに似合わずやり手なのだ。(しかも、エリア・カザンの孫だという。)その上、相手役である主人公を演じたポール・ダノは彼女の現実の恋人らしい。なんだかそれって凄い。この映画の内容と相似形じゃないか。まぁ、そういうゴシップはどうでもいいけど、なんの予備知識もなく、たまたま飛行機の中で見た映画が、こんなふうに楽しいと、なんだか得した気分になる。劇場公開は大阪は2月からで、東京ではもう公開しているらしい。そんなことも知らなかった。

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