習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『デスノート』

2006-11-17 00:28:28 | 映画
 前後編、併せて4時間半の大長編である。これを金子修介は全く息もつかせず一気に見せてしまう。こんなにも面白いものになるなんて、予想さえしなかった。マンガの映画化で、ペラペラのCGの死神が出てきて、安っぽい設定のB級映画だとたかをくくっていたのに、それが何の何の、次は一体どうなるのかと興味をどんどんかきたてていく。

 しかもよく考えられているから、そんなバカなと思いつつも、乗せられてしまいラストまでノンストップで見せきられる。前編のラストで、エル(松山ケンイチ)とライト(藤原竜也)が初めて向き合うところで予想通りにエンドタイトルが出た時には、正直やられたね、と思った。こんな映画にはまったよ、と苦笑せざるえなかった。

 最近純粋な娯楽映画で、これ程面白い映画はなかったのではないか。藤原竜也が正義の犯罪者をクールに演じ、前編の終盤では、自らの完全犯罪のために恋人をも冷酷に殺してしまう。彼の狂気はそのシーンまでひた隠しにされていたのもすごい。映画を見ている僕らはあのシーンまで彼を正義の人として支持していたのである。彼の行為は法で裁ききれないものを確かに裁いていると思わせる。彼は間違っているかもしれないが、正しいと思って見ていた観客を見事裏切り、心を凍りつかせる。

 藤原の静かな芝居と対照的に松山はとんでもないメイクと奇行で、エルというもう1人の天才を演じる。映画自体はあくまでも社会派ドラマなんかにならず、エンタテインメントの王道を行く分かりやすさで、お話の魅力でグイグイ引っ張っていく。

 後編は前編に較べて話が煮詰まってくるのはしかたない。ここまでライトを追い詰めていくのだから前編のように自由自在にはなれないが、それでも、第2、第3のキラを登場させてラストまで予想外の展開を見せていく。そのストーリーテリングの上手さで全く飽きさせない。いったいライトとエルのどちらが、この頭脳戦を制するのか?ワクワクしながら見ることになる。

 B級映画のテイストをしっかり踏まえて、いかに面白く見せるかということのみに腐心する。まさにキング・オブ・ムービーである。(実はそこまで言うほどたいした映画ではないが)、こういう健全な娯楽映画にたくさんの観客が集まるのは健全でいいことだと思う。

 

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