配信で見たのだが、2時間半の長尺なのに集中が途切れることもなく、一気に見ることができた。出来ることなら昨年12月の劇場で見たかった、と今更ながら公開させられる。それくらいに素晴らしい出来なのだ。実に残念だ。でも、こういう形で見る機会を与えてもらい感謝している。
先の2作が素晴らしく、完結編がどんなことになっているのか、とても楽しみだった。特に2作目の発想がすばらしく、忠臣蔵ってこんなお話だったのかと、初めて理解できた気がした。従来ならお話自体は討ち入りで終わっているのだが、くるみざわさんと笠井さんが手掛けた今回の忠臣蔵はここからが本番だ、と言っても過言ではない。
吉良の首を取ることが、仇討の本懐ではない。その先にいる柳沢や、将軍綱吉、さらには江戸幕府の転覆も視野に入れる。もちろん史実を変えるのではない。そこから始めるのだ。そのへんの事情は2作目で描かれていた。
今回も前作の続きから始める。最初は2番煎じかと思われた。大石たちの処分をどうするか、そこに様々な事情が交錯する。だがやがてどんどんお話に引き込まれていく。実に面白い。それぞれの思惑が交錯する。描きたかったのはその先で、そこが改めて明確になる。
お話は地味な後日談のはずだった。しかし、それをこんなにもドキドキするようなお話にした。しかも、派手なアクションではなく、基本は密室での会話劇である。2人から3人が密談する。その中で権謀術数が繰り広げられる。それがスリリングに描かれる。忠臣蔵という題材に新たな視点から光を当てる。しかもエンタメでもある。政治を扱い、エンタメにする。こういう作品に仕立てながら、もちろんそれだけでは終わらないのがすごい。