『神様のカルテ』シリーズのスピンオフのような作品。新任の研修医(ピカピカの1年目)と、若い看護師(3年目)の1年間を4つのエピソードで描く。とても気持ちのいい作品だ。読んでいて心洗われる。夏川草介のいつものワンパターンなのだけど、清涼剤のような小説で元気になれる。
地方の(というか、今回も信州)小規模病院を舞台にして,彼らが高齢者患者たちと向き合い、日々何をして、何を目指して生きているのかがしっかりと伝わってくる。必死になって自分の仕事と向き合い、成長していく姿が眩しい。それを支える大人たちも素敵だ。
僕たちは、日々の暮らしの中で、最初の気持ちなんてなくしてしまい、いつのまにか、ルーティーンワークに陥ってしまいそうになる。でも、この小説を読むと、それじゃぁ、だめだな、と反省させられる。とても素直な気持ちになれるのは、彼らのまっすぐな瞳が眩しいからだが、それだけではなく、それこそが人が生きていく上で一番大切なことだと思い知らされるからだ。
若い彼らと高齢者の患者を対峙させ、そこに生じるものを見つめていくことで、そこから誰にも通じるものが見えてくる。これは医療現場のお話に止まらない。生き方の問題なのだ。忘れてはならないものがここには確かにある。