かなり驚く。こんなにも単純な劇構造を持つクロムなんて、僕が知ってるクロムではない!なんて、叫んでしまいそうになる。ストーリーラインがとてもシンプルなのには確かに驚かされる。ラストなんて、いつのまにか犯人の妄想に取り込まれて大騒動になり、気付くと終わっている。なんだか騙された気分。大団円を絵に描いたような展開を見せる。
死刑囚(森下亮)を拉致してきて、監禁し、殺そうとする遺族たち。彼に殺された2人の女たちの兄たち、彼女たちの友人である女。彼らは殺し屋(板倉チヒロ)を雇い男を誘拐させる。犯行後、意識をなくし、今も眠り続け刑に服せないままの男を何とかして目覚めさせ復讐したいと願う。
彼の夢の中に入り込んで、彼の内面で今起きているドラマを見る。その後、男は目を覚ますが、記憶がない。
それにしてもいい加減な話だろ。いつものクロムワールドである。テンポよくそんな話が展開していく。遺族の思いと殺人者の内面にもっと踏み込んでもいいのに、敢えてしない。社会派としての客観性なんてものには作、演出の青木さんはまるで興味がない。僕たちはこの殺人者の巨大な胃袋の中に取り込まれていくようにこのお話の中に取り込まれていく。
この芝居には警察とか、それどころか外部の人間は一切登場しない。この場所は外の世界とは完全に断ち切られた空間として設定される。犯人と殺された2人の女の関係が明るみに出る。遺族である兄が妹に対して性的暴力を振るっていたこと。その事実から逃避するために妹は友人を虐めていて、その友人は更にその友人を虐めるという連鎖が描かれていく。
この芝居の核心にいる殺された女カカトを演じる葛木英がいい。クロム初登場の彼女は他のクロムの役者たちとはまるで雰囲気が違う。彼女の鋭い目線がクロムの役者たちのドヨ~ンとした目とはちょっと違い、彼女のハードさが、このとってもユルイ空間を引き締めていく。
でも、引き締めたってすぐにいつものように緩くなってしまい気付くと彼女もここに取り込まれている。クロムは伝染るんだなぁ、なんて思った。クロムの役者はなんとなくクスリかなにかをやっているみたいで、彼らとしてはフツウにしているはずなのに、どう考えても普通じゃないアブナイ人になっている。それは今回の殺人犯、森下くんだけではなく、全員がそうである。異常なことをしている人も、していない人も、みーんな含めてとってもアブナイ。だからといって彼らはふざけているのでも、狂気を内に孕んでいたりするわけでもない。この芝居が描くシリアスな社会派的なパッケージの中で、真剣に彼らが直面する事態と向き合っているのにそうなるのである。
この芝居をコメディーだと思う人も多いと思う。コメディーと思い、そうして最後まで見たらしっかりコメディーとして楽しめてしまうところがクロムの凄さだ。懐が深いから誤解だってちゃんと受け入れてくれる。騙すのではなく、その通りのものを見せてしまえるのだ。
だが、本当はそんな単純なものではない。単純なフリをして、この芝居は怪物と化した人間の心の襞をねっとりと見せる。たった8人の登場人物たちが犯人の妄想の世界の中に取り込まれ、誰が正常で、誰が狂っているのかもわからないまま、幕を閉じる。気付くとみんな死んでいる。
死刑囚(森下亮)を拉致してきて、監禁し、殺そうとする遺族たち。彼に殺された2人の女たちの兄たち、彼女たちの友人である女。彼らは殺し屋(板倉チヒロ)を雇い男を誘拐させる。犯行後、意識をなくし、今も眠り続け刑に服せないままの男を何とかして目覚めさせ復讐したいと願う。
彼の夢の中に入り込んで、彼の内面で今起きているドラマを見る。その後、男は目を覚ますが、記憶がない。
それにしてもいい加減な話だろ。いつものクロムワールドである。テンポよくそんな話が展開していく。遺族の思いと殺人者の内面にもっと踏み込んでもいいのに、敢えてしない。社会派としての客観性なんてものには作、演出の青木さんはまるで興味がない。僕たちはこの殺人者の巨大な胃袋の中に取り込まれていくようにこのお話の中に取り込まれていく。
この芝居には警察とか、それどころか外部の人間は一切登場しない。この場所は外の世界とは完全に断ち切られた空間として設定される。犯人と殺された2人の女の関係が明るみに出る。遺族である兄が妹に対して性的暴力を振るっていたこと。その事実から逃避するために妹は友人を虐めていて、その友人は更にその友人を虐めるという連鎖が描かれていく。
この芝居の核心にいる殺された女カカトを演じる葛木英がいい。クロム初登場の彼女は他のクロムの役者たちとはまるで雰囲気が違う。彼女の鋭い目線がクロムの役者たちのドヨ~ンとした目とはちょっと違い、彼女のハードさが、このとってもユルイ空間を引き締めていく。
でも、引き締めたってすぐにいつものように緩くなってしまい気付くと彼女もここに取り込まれている。クロムは伝染るんだなぁ、なんて思った。クロムの役者はなんとなくクスリかなにかをやっているみたいで、彼らとしてはフツウにしているはずなのに、どう考えても普通じゃないアブナイ人になっている。それは今回の殺人犯、森下くんだけではなく、全員がそうである。異常なことをしている人も、していない人も、みーんな含めてとってもアブナイ。だからといって彼らはふざけているのでも、狂気を内に孕んでいたりするわけでもない。この芝居が描くシリアスな社会派的なパッケージの中で、真剣に彼らが直面する事態と向き合っているのにそうなるのである。
この芝居をコメディーだと思う人も多いと思う。コメディーと思い、そうして最後まで見たらしっかりコメディーとして楽しめてしまうところがクロムの凄さだ。懐が深いから誤解だってちゃんと受け入れてくれる。騙すのではなく、その通りのものを見せてしまえるのだ。
だが、本当はそんな単純なものではない。単純なフリをして、この芝居は怪物と化した人間の心の襞をねっとりと見せる。たった8人の登場人物たちが犯人の妄想の世界の中に取り込まれ、誰が正常で、誰が狂っているのかもわからないまま、幕を閉じる。気付くとみんな死んでいる。