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不思議な小説だ。これだけではなく、最近読む本はいずれもそんな感触の作品が多い。自分の趣味の問題なのかもしれないけど、いずれも、たまたま図書館の新刊コーナーで手に取った作品で、必ずしも、自分の趣味ではない。
セックスレスのふたり。まだ20代のカップルなのだが。最初はそうではなかったけど、数か月でそういうふうになる。卵巣の病気も原因か。男の子は優しい。女の子は今までも誰と付き合ってもそういうふうになり、やがて別れるというパターンを踏む。でも、今回は違う。
だけど、彼がある日他の女と彼女を合わす。実はその女性が妊娠した。彼の子だという。要するに浮気していたみたいなのだ。でも、それだけならただのよくある話。浮気の原因は彼女のセックスレス、という、わけではない。浮気相手の女とはお金の関係だという。愛はないと。そんなこと言われても「そうですか」と返すわけにもいかないし、なんだかなぁ、であろう。しかも、その女が子供は産むという。でも、その子を引き取って育ててくれという。とんでもない話だ。
そんなこんなのお話がなぜか淡々と綴られていく。ありえないようなお話で、そんなとんでもない展開を自然なことのように受け止める。感情の起伏のないこのお話は、彼女が冷静であればあるほど、不思議な感触を読み手である僕に与える。昔飼っていた犬のほうが、彼より好き。恋人は犬以下なのか?そうではない。それほどにその犬が大事だったか?そうでもない。じゃぁ、何なのか。
クラゲが空から降ってくる話(鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』)や、昔付き合った女に導かれて母親の幻を追いかけていく話(村上龍『MISSING 失われているもの』)や、火事場から助けた幼児をそのまま誘拐してしまう男の話(生馬直樹『雪と心臓』)やら、今月に入ってから、変な小説ばかり読んでいる。つまらないわけではいけど、おもしろいわけでもない。これら説明不可の出来事や感情を描く小説は、そのなんだかよくわからない気分を丁寧に描写する。わからないけど、なんとなく、理に落ちる。その感じが好き。