習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

千早茜『クローゼット』

2018-04-09 22:46:10 | その他

映画に続いて、小説でも早くも今年ベストワンに出会ってしまった
今年の春はラッキーだった。『西洋菓子店プティフール』も素晴らしかったけど、この繊細で傷つきやすいクローゼットの中の洋服たちを描いた物語はそれ以上だ。そして、ここにはクローゼットに閉じ込められた2人ともうひとりの物語が描かれてある。



これもまた、女2人と男1人という3人の物語だ。そこでの性差は関係ない。2人と1人という3人というのが大事になる。だから今年の映画ベストワン『坂道のアポロン』や、2位『ちはやふる
結び』と同じ、ということだ。3角関係のラブストーリーが定番になるのは、3は割り切れない最小単位の共同体で、人と人との関係の最小単位だからだろう。男と女しかこの世にはいない、というのが建て前だが、ほんとうはそうではない。男も女もなく、ヒトとヒトしかいないというのが正しい。ヒトは人と関わることで初めて人間になることができる。



ひとりで心を閉ざして洋服と向き合って生きてきた女性が、彼女のつまずきの人生のスタート地点で出会った最高に素敵な男の子と再会するまでの物語である。彼女をずっと守ってきたを女性がその間に入る。そんな3人の話だ。自分が男であろうと女であろうと関係ない。綺麗なものに心惹かれる。それを大切にしたいと思う。それがモノ(洋服)であろうと、ヒト(人間)であろうと、同じ。



ここに描かれる「大切なものを守りたい」と思う気持ちが愛おしい。作者は単行本化に際して『硝子のコルセット』という原題からもっと大きなタイトルである『クローゼット』に改題した。とても正しい判断だ。3人が3人ともそれぞれの傷みを抱えてそれを乗り越えるために日々戦っている。だから彼らは出会う。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『坂道のアポロン』 | トップ | 『ライフ・ゴーズ・オン 彼... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。