習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ワンチャンス』

2014-04-05 23:04:48 | 映画
 こういう風にしか生きれない人もいる。いじめられて逃げる。その逃げるシーンが延々と続き、その途中で主人公はどんどん成長していく。この冒頭のエピソードが秀逸だ。成長、というのは、子供のシーンから、小学生くらいになり、やがて高校生のなるまでを、ワンシーンで見せていくことを言っている。一瞬で彼のこれまでの人生を象徴的に見せきる。秀逸なエピソードである。この映画の世界にそれだけで入り込める。

 やがて、この不器用な男の不器用な恋愛が描かれる。なんだか、ほほえましい。だが、そこから唐突に彼の夢の実現が描かれていくことになる。ウソだろ、と思うようにうまくいく。映画はものすごくテンポがいい。あれよ、あれよという間に、音楽の世界で生きる夢に時間を過ごす彼が描かれる。

 オペラ歌手になりたい。ふとっちょで、さえない男が、夢に実現に向けて前進する。ベネチィア留学の夢のような時間、だが、夢は尊敬するオペラ歌手の前で歌うことに失敗したときに打ち砕かれる。

 夢は実現しない。その後には、さえない自分にはお似合いのさえない現実しかない。生まれた町に帰ってきて、父親の紹介で働く。だが、夢は捨てられない。さらには、恋人から拒絶される。そんな彼でも、幸せになる権利はある。彼女への想いを成就させる。彼女が応援してくれる。再び、チャンスを掴む。ここからが映画の本題になる。

 たわいもないお話である。でも、事実をベースにしているらしい。なんだか、ほっこりする。まじめに生きていると、こういうふうにして報われることもある。よかった、よかったと思う。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『大人ドロップ』 | トップ | 藤谷治『世界でいちばん美しい』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。