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映画・演劇のレビュー

『ルオマの初恋』

2009-02-14 18:15:48 | 映画
 何もない。話らしい話はないということだ。雲南の少数民族ハニ族の少女ルオマを主人公にする。彼女は毎日町にとうもろこしを売りに行く。1本が5角だ。1日座っていても何本売れるのかは知れない。だが、たいした収入にはならないことだけは明白だ。

 カメラマンの男が写真のモデルにならないかと誘う。モデルといっても彼女と棚田を背景にしてカメラに収まるだけだ。写真を撮るごとに観光客から10元(とうもろこし20本分だ!)貰う。それだけ。彼女は彼と接するうちにほのかな恋心を抱くようになる。まぁ定番だ。

 美しい自然を背景に描かれる少女の初恋は当然のように失恋で終わる。たわいない映画かもしれない。特別なお話があるわけでもない。だが見ていていい気分にしてくれる。それは風景のあまりの美しさとそれをそっけなく撮っていることによる。監督のチアン・チアルイは特別なこととして、この特別に美しい村を描きはしない。ここで生活する人にとってはこの美しさはただの日常だからだ。

 ヒロインのルオマ(リー・ミン)はみんなから美しいと言われる。観光客は彼女のとうもろこしは一切買わないくせに彼女と2ショットでカメラに収まりたがる。彼女はそんな外国人観光客に対して反感を持っている。当然だ。「笑って」と彼らは言う。なんで笑わなくてはならないのか、と彼女は思う。映画は彼女が自分の美しさに無自覚である、とは描かない。散々みんなから美しいと言われたら当然意識するだろう。だが、その美しさを武器にして生きて行こうだなんてしない。彼女はただいつものようにとうもろこしを売るだけだ。そこに彼女の現在がある。ここでこうして生きる。それ以上でもそれ以下でもない。祖母とふたりでこれからもひっそりと生活していく。

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