石井岳龍監督が久々に放つアクション巨編。町田康のハチャメチャな原作を得て、自由自在に破天荒な映画を作る。このやりたい本題感は、快感だ。冒頭からの派手な立ち回り以上に凄まじいナレーションの膨大な嵐。その過剰な饒舌タッチも面白い。派手なアクションは当然のこと。期待が高まるオープニング。
途中を端折っていうと、終盤のモブシーンのすさまじさには圧倒される。これはインド映画なのかと思わせるようなダンスシーンと、先の読めない(読ませる気もない)ストーリー。これからエンディングはどうするのか、とドキドキさせる展開。オールスターキャストがこんなことも、あんなことも、する。バカバカしさの極地。なのに、映画はつまらない。
弱小藩を舞台にして、バカと猿が戦う話。どうでもいいようなお話をどんどんエスカレートさせて、暴動の映画にしてしまう。これは往年の傑作『爆裂都市』を思わせる不穏な作品か、と一瞬思わせるのだが、実は中盤からどんどん失速して、どうでもいいような映画に転落してしまうのだ。
クライマックスの戦いに至っては、派手に頑張れば頑張るほど、空回りして痛々しい。どうして、こんなことになったのか。あまりのバカバカしいお話に愛想が尽きる、とでも言うべきなのか。だが、最初からそんなことわかっていて、それでも、いや、それだからこそ、笑って見ていたのだ。宮藤官九郎の脚本は決して悪くはない。おふざけの極地を、映像がさらに加速させて、役者もノリノリで、暴走していくのだから、企画意図通りのはず。なのに、それがスベリ始めるのはどうしてだ?
お話は終盤にはシリアスに転じなければならなかったのだろう。2時間10分のバカ騒ぎだけでは飽きてくるのだ。バカがだんだん本気になり、笑えなくなる瞬間になんらかの感動が訪れる。そういう図式が欲しい。猿の親分がなぜか言葉をしゃべれて、バカ殿をあやつり、この藩を乗っ取ることになる、とか、『猿の惑星』タッチのお話でもいいのではないか。なのに、収拾をつけないで、破天荒なまま、暴動は何だったのか、と思わせて終わる。
仇討ちですか、結局は。ラストのオチはわかっていたけど、(だってこのタイトルですし)でも、それで終わっても意味ないじゃん。もっとこのあり得ない作品世界を生かせなくては映画自体がただの冗談にしかならないではないか。壮大なホラ話では、納得しない。時代劇という枠から解き放たれた荒唐無稽の世界が、どこにたどり着くのか。作り手は混沌を描くだけで終わらせてはならない。熱くなるだけではなく、愚かさを笑い飛ばすのも、大事だろうが、石井監督がこの世界の果てに何を見いだそうとしたのか。それがちゃんと見えてこないことには、映画は成り立たない。