今回の新選組は三島の戯曲『近代能楽集』の1篇に挑戦した。古典とは言えないけど、新作でもないし、どちらかというとクラシックな作品を取り上げ、今、ここで見せることの意味を提示できるのか、興味津々で見たのだが、期待以上(こんな失礼な言い方して、すみません!)の作品に仕上がっていて感心した。
まず役者たちが上手い。だから緊張感のある作品になった。対峙する二組の夫婦を演じた4人が4人ともすばらしかった。まるで真剣勝負の大相撲を見ているような気分。(てことは、舞台は土俵か?)先日まで春場所を見ていたから、そんなとんでもない例えになるのか?
でもこれはダブルスであるにもかかわらず、やはりプロレスではなく、相撲である。芝居なのに、それは瞬殺可能なバトル。育ての親と生みの親が左右に座り、向かい合う。今はまだここには不在の(別室で待機している)息子の養育権を巡る争いが静かに繰り広げられる。劇団の両巨頭である南田信吉さんと古川智子さんが対面に、その補佐として客演の本多信男、めりがサポートに入る。そんな火花散らすバトルのジャッジを阿矢が演じる。久々に大人の芝居を見せてもらえたような気がする。力のある戯曲を確かな力量を持つ役者たちがスタジオガリバーという狭い空間を活かす密度の濃い(空気の薄くなるような)作品として立ち上げた。
だが、特筆すべきは彼らではない。芝居の後半満を持して登場する大城戸洋貴だ。感情を表に出すことなく、静謐の中で悶え苦しむ内面を包み込み、クールに見せていく。心を一切表に出さない無表情の芝居がすばらしい。4人の大人たちと向き合って怯むことなく、それどころか全く動じず、彼ら以上に静かに心のないモンスターを演じた。盲目という困難な設定も味方に付けて、この作品の主役という重責を全うした。世界を拒絶する彼が何をこの先に見たのか、そこがこの作品の肝で確かに作品はそこにたどりついた。