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映画・演劇のレビュー

『アンダードック』

2012-04-27 22:05:16 | 映画
 こんなマイナーな中国映画が、ちゃんとDVDとなって、公開されていたことに驚く。一応アクション映画として、ジャンル分けされたから、発売されたのだろうが、これはつまらないB級アクションではない。だが、それじゃぁ、ちょっとした文芸映画か、なんていわれると、とんでもない。でも、なんだか分類が難しい映画なのだ。しかも、これで驚くほど出来のいい映画なら、世界の映画祭とかでたくさん賞を取ったりして話題にもなるだろうが、それほどではない。というよりもなんだか中途半端で、何のセールスポイントもない映画だ、とも言える。じゃぁ、ダメな映画ではないか、と言われると、それもちょっと違うのだ。なんだか難しい。監督はジャッキー・チェンの『ラスト・ソルジャー』を任されたディン・ション(丁晟)。

 海に落ちた仲間を助けようとして、自分も溺れて、脳に障害を持つことになった男が主人公。海軍を退役した彼は、事故の後遺症から、記憶に障害を持ち、普通の仕事は出来ないし、普通の生活も送れない。母親の介護のもと、ひっそりと暮らすしかない。だが、事故のせいでもあるのだが、ありえないくらいに正義感が強くなり、正しいことを行使することだけを望む。子供っぽいヒーローを体現するのだ。

 知能障害から、普通の反応ではなく、そんなありえないような純粋培養された思考をするようになる。映画は正しいことのために邁進する彼の行動を追いかけながら、彼を追い詰める刑事や、彼と関わる香港マフィアのボス(アンソニー・ウォンだ!)との関わりを描いていく。『タクシードライバー』のような映画になってもよかったのだが、話にまるで奥行きがない。主人公の正義感をどう扱うのか、それが大事なポイントのはずなのだが、まるで見えてこない。彼の悲しみとか、彼が自分をもてあますところとか、いくらでもメリハリはつけれるのに、しない。主人公の独白をベースにした乾いたタッチはなかなかいいだけに惜しい。

 映画はちゃんとハードボイルドしているのだが、彼のとんちんかんな行動はそんなタッチと噛み合わない。でも、そこがこの映画の魅力でもある。単純なアクションにはならない。でもそれが突き抜けた何かを提示するまでには至らないから、なんだか中途半端で物足りないのも事実だ。なんとも評価が難しい。でも、たまにはこんなへんてこな映画を見るのも楽しい。



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