習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『光のほうへ』

2012-04-25 21:25:42 | 映画
『光のほうへ』というタイトルがいい。シンプルだけど、気持ちがしっかりと伝わってくる。これは兄と弟のお話だ。実は最初チラシを見たとき、これは子供たちを主人公にした映画だろうと、思ってた。だから始まって10分ほどで赤ちゃんが死んでしまい、2人の少年たちのドラマが終わってしまったときの驚きったらない。途中何度も回想シーンに入り、再び本題であるはずの「子供たちの話」に戻るのだ、と期待したのだが、そんなことは全くなく、結局は大人となった2人の話に終始する。見ている僕にはそんなつもりはまるでなかったから、なんだかとても焦った。少年たちによる心暖まるお話なんかを期待していたのに、まるでそんな映画ではない。でも、それって僕が勝手にこの映画は少年たちの話なのだ、と誤解しただけのことなのだが。

 ということで、大人になった2人が、アル中の母親の死から、再会し、そこから始まるドラマだけが描かれていく。もがき苦しみながら、必死になって生きていく彼らの姿を丁寧に追いかけながら、彼らが光のほうへとむかうことを願う姿が描かれていく。だが、それもかなわない。

 そんな絶望のドラマがここには描かれていくことになる。見ていてとてもつらい。救いのない映画だ。だが、どうしようもないことを描きながら、そこからほんのちょっとした光を見出して、そこにすがり、生きていこうとするこの2人の傷ましい姿から、目が離せない。でも、見ていてこんなにもきつい映画もなかろう。

 この救いようもない映画を見終えたとき、こんなにも重くて苦しい時間が、それでも、とても大切なものに思えた。これはとてもいい映画だ。でも、見るにはかなりの体力がいる。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宮下奈都『太陽のパスタ、豆... | トップ | 『アンダードック』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。