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映画・演劇のレビュー

劇的☆爽怪人間『ロケット流星群』

2020-11-26 21:32:34 | 演劇

今年もウイングカップは開催される。11月から来年の2月まで、総勢7団体が参加する。そしてこの作品はそのトップバッターだ。なんと1回こっきりの上演。でも、お手軽に作った安易な作品ではない。実に手の込んだ気合の入った作品なのだ。見ていて気持ちがよかった。若手劇団だからこそ可能な一途さと生真面目さ。初々しくて全力投球。それが実に爽やか。劇団名にあるように「爽快」なのだ。(まぁ、劇団名は「爽快」ではなく「爽怪」なのだけど)彼らはこの作品をコロナが収束(終息はしないだろうけど)したならすぐに再演するようだ。それくらいの自信作なのだろう。たった1回の上演ではもったいない。

「自分で作ったロケットを宇宙に飛ばす」そんな子供じみた自分たちの夢を実現させるために全力で立ち向かい、立ち止まることなく、走り抜けていく2人の男たちの熱い想いを支持したい。これはこれで気持ちがいい。

だが、正直言うと、芝居自体はいささか空回りしている。スタッフワークがしっかりしているから安心して見ていられるけれど、それ以上のものはない。よくできているし丁寧な芝居だから好感は持てるけど、それ以上のものがないのだ。

まず、お話が単調すぎた。こんなにもストレートなのだ。驚く。きっとそこがこの作品の魅力なのだろうけれども、それだけでは物足りない。言いたいことは一つで、そこに向かって突き進むだけ。作り手たちのこれをやりたいという熱い想いだけはびんびん伝わってくるのだが。

必要なのは夢に突き進むことがどこにつながり、それは何なのか、ということ。この物語の先に見えるものが欲しい。テーマは「働くうえで大切にするものは何なのか」ということらしい。わかりやすいし、明確だ。だけど、芝居の答えはそれだけでは弱い。もう少しそこに「何か」が欲しいのだ。

 


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