今年のHPF最終番組。阪本龍夫先生のオリジナル台本。2022年冬を舞台にした4人の少女たちの物語。コロナも一段落して日常が戻ってきたはずなのだが、現実は苛酷で、政府は憲法を改悪して、自衛隊は軍隊になり、ワクチンは一応いき渡ったが、さらに強烈な変異株が蔓延しつつある。クリスマスイブの直前。なぜか職員室には先生たちは誰もいない。学校自体もひっそりしている。不穏な空気。そんなところから始まる。
明日のライブのために、校内の倉庫で稽古をしていた彼女たちがなぜか閉じ込められてしまう。大きな物音がしてドアが塞がれ外に出られなくなる。何が起きたのかわからない。ケイタイもつながらないから外部との連絡も取れない。
何かが起きている。それが何なのか、わからない。そんな4人のもとに、ひとりの男がやってくる。この倉庫内には彼女たちのほかには誰もいなかったはずなのに、気づけば彼がそこにいる。なんと彼は1968年の秋からタイムスリップしてきたようなのだ。学生運動に参加していて機動隊に追い詰められていた高校生らしい。
時空をこえた4人と1人の出会いと別れを通して、彼女たちが未来に向けて立ち上がる姿が描かれる。今から1年後の近未来を舞台にして、世界の終わりと向き合う高校生というとんでもないドラマが綴られていく。
タイトルの『今日もいい日だ!』という逆説を逆説のままにしないために何が必要なのか。それぞれが考え、彼女たちと一緒に立ち向かっていこうという素直なメッセージが心地よい。とてもシンプルでわかりやすい劇だ。そして力強い。阪本先生は今高校生たちに何ができるのかを考え、この台本を彼女たちに託したのだろう。そんな期待にしっかりと応える作品に仕上がっている。この夏HPFの最後に相応しい力作である。