1972年。ベトナム戦争さなかのアメリカ。合衆国史上初の女性大統領候補として大統領選を戦ったシャーリーの選挙戦を描く。女性初の下院議員となり大統領に向けて邁進する彼女の姿が描かれる。
冒頭の議員団の記念撮影のシーンから、テンポよく展開する映画は軽快。彼女を支える夫の姿も心地よい。さらには終盤の失速からの終戦さえも潔い。
映画は彼女から始まったアメリカの新しい歴史をこの選挙戦に絞り込んで見せた。彼女は誰に対しても臆することなく、邁進する。女だからとか黒人だからとか、言い訳はしない。確実に負けることはわかっていても、戦い抜き、最後まで負けない姿勢を貫くことでやがてくる新しい時代を先取りする。怒濤の70年代の中で彼女は戦い続ける。
映画はそんな彼女に寄り添って走り続ける。今こういう時代だからこそ、50年前にここまで頑なに時代に負けない戦いを見せた黒人女性がいたということを知ることに意義を感じる。どんな時代であろうとも、走り抜ける。これはそんな覚悟を描く映画だ。