このわけのわからないタイトルそのままのつかみどころのない小説だ。最初は何を読んでいるやら、とかなり戸惑ってしまったけど、だんだん慣れてくる。そうするとこのまったりとした世界はそれなりに心地よい。ようやくいつもの川上弘美だと安心する。100ページくらいまでかかった。
幼稚園の頃、カリフォルニアで過ごした。その後、東京に戻って50年ほど。もうすぐ60になる3人の再会からの交流が描かれる。人生がまもなく終わる。毎日がとんでもなく長かった幼児の時代を共に過ごした日々。今、それなりに生きてきて、なんだかわからないまま、小休止している。2020年、春からの日々。もちろんコロナのせいだ。
作家であるわたし。まだカリフォルニアにいるアン。今は作詞家をしているカズ。彼らの『それから』が描かれる。
後半はいつもの川上弘美世界になる。主人公のわたしの日常のスケッチが淡々と続くのがいい。2020年から23年の春までの現在進行形。60代の前半。同世代だからできる共感がある。50年の空白は直接は描かれないが、そこに確かにある。『今』はこれまでの蓄積の先にあるという当たり前のことが、しっかり伝わってくる。
この先何が起こるかなんてわからない。もう老年期だからと諦めることもない。まだまだ人生は続く。