これはとても難しい題材だ。それを片岡百萬両はとても見事に処理した。アーノルド・ロベールの絵本を原作にして2時間の芝居に仕立てる。簡単そうに見えて、とんでもなく大変なことだ。シンプルなお話をそのまま見せながら、視覚的にも楽しくて、ノーテンキで明るい芝居、だから、当然動きが大きく、ダンスシーンもたくさんあって、誰もが楽しめる。
でも、それだけでは、すぐに飽きてくる。これだけ仕掛けがいっぱいで、ド派手で、役者が縦横無尽に動き回っていて、段取りも大変なのに、それが、作品自体の完成度の高さにはストレートにつながらない。しかも、ターゲットにするには、おやこ劇場(そんなの、今もあるのだろうか?)の子どもたちではなく、小劇場にやってくる大人の観客が中心である。よほどのことがなくては上手くいかない芝居である。
これを楽しいだけのエンタメ芝居以上のものにするためには、このパッケージングからはみ出してくるものが必要で、台本の竜崎だいちさんと演出の(もちろん主演!)片岡さんは、そのへんもしっかり理解し、この半端ではなく困難で危険な題材にトライしたのだ。
この作品の肝は、ただの通り一遍の童話、にはしなことにある。バートラムが、ごめんなさいと謝り終わる、のではない。もちろんそこはそことして、ちゃんと抑えたうえで、いたずらの反省、みんなが許して、という定石の構図だけでは終わらせない。
もともと、彼はとても優しい少年で、リリー(SUN!)が作ったしょうがクッキー(あまりの味に誰も食べれない!)を喜んで、きちんと食べる。みんなに優しくとても素直な子供なのだが、それが過剰とか、過激に表現されるから、上手く人には伝わらないだけなのだ。(まぁ、それって当然のことだが)そんな彼の心情を、きちんと突き放して、よくある童話の文体の中で描いていく。
表面的には単純で、ありきたりな構造に見えるのだが、キャラクター造形も、ドラマの運びも必ずしもそうではない。彼が苛め抜いてきたキツネのスノー(山田まさゆき)との関係がとてもいい。許すこと、裏切り。その描き方が単純ではない。裏切られたのにスノーはバートラムを許す。そこにあるのは、彼のバートラムへの直線的な想いだ。目に見えるわかりやすさだけで、このドラマを展開させたりしないのが素晴らしい。
『ダメダメサーカス』に続いて、こういうファンタジーに挑み、絵本の舞台化に伴うハンディーを克服し、原作のエッセンスを重視しながらも、独自の方法論で、視覚的に見せた竜崎、片岡コンビのこだわりが、単調になりがちなこの物語に深みを与えた。
冒頭のテンポのいいいたずらの数々から、竜に姿を変えられて、森の中で生活することになった後の、本来なら停滞していくはずの部分も含めて、一貫性のある描写で統一したのがいい。単調になるのは重々承知しつつも、敢えてわかりやすいメリハリをつけることをせず、バートラムというピュアな心(それがたとえ人を困らせる方向に向かっていったとしても)を信頼し、彼の心にしっかり寄り添い、ラストまで持っていく。この作り手の誠実さが、ブレのない舞台を生んだ。いつもながらの目に鮮やかな衣装も心地よい。
でも、それだけでは、すぐに飽きてくる。これだけ仕掛けがいっぱいで、ド派手で、役者が縦横無尽に動き回っていて、段取りも大変なのに、それが、作品自体の完成度の高さにはストレートにつながらない。しかも、ターゲットにするには、おやこ劇場(そんなの、今もあるのだろうか?)の子どもたちではなく、小劇場にやってくる大人の観客が中心である。よほどのことがなくては上手くいかない芝居である。
これを楽しいだけのエンタメ芝居以上のものにするためには、このパッケージングからはみ出してくるものが必要で、台本の竜崎だいちさんと演出の(もちろん主演!)片岡さんは、そのへんもしっかり理解し、この半端ではなく困難で危険な題材にトライしたのだ。
この作品の肝は、ただの通り一遍の童話、にはしなことにある。バートラムが、ごめんなさいと謝り終わる、のではない。もちろんそこはそことして、ちゃんと抑えたうえで、いたずらの反省、みんなが許して、という定石の構図だけでは終わらせない。
もともと、彼はとても優しい少年で、リリー(SUN!)が作ったしょうがクッキー(あまりの味に誰も食べれない!)を喜んで、きちんと食べる。みんなに優しくとても素直な子供なのだが、それが過剰とか、過激に表現されるから、上手く人には伝わらないだけなのだ。(まぁ、それって当然のことだが)そんな彼の心情を、きちんと突き放して、よくある童話の文体の中で描いていく。
表面的には単純で、ありきたりな構造に見えるのだが、キャラクター造形も、ドラマの運びも必ずしもそうではない。彼が苛め抜いてきたキツネのスノー(山田まさゆき)との関係がとてもいい。許すこと、裏切り。その描き方が単純ではない。裏切られたのにスノーはバートラムを許す。そこにあるのは、彼のバートラムへの直線的な想いだ。目に見えるわかりやすさだけで、このドラマを展開させたりしないのが素晴らしい。
『ダメダメサーカス』に続いて、こういうファンタジーに挑み、絵本の舞台化に伴うハンディーを克服し、原作のエッセンスを重視しながらも、独自の方法論で、視覚的に見せた竜崎、片岡コンビのこだわりが、単調になりがちなこの物語に深みを与えた。
冒頭のテンポのいいいたずらの数々から、竜に姿を変えられて、森の中で生活することになった後の、本来なら停滞していくはずの部分も含めて、一貫性のある描写で統一したのがいい。単調になるのは重々承知しつつも、敢えてわかりやすいメリハリをつけることをせず、バートラムというピュアな心(それがたとえ人を困らせる方向に向かっていったとしても)を信頼し、彼の心にしっかり寄り添い、ラストまで持っていく。この作り手の誠実さが、ブレのない舞台を生んだ。いつもながらの目に鮮やかな衣装も心地よい。