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映画・演劇のレビュー

川上未映子『発光地帯』

2011-05-20 21:22:47 | その他
 このエッセイ集はちょっと普通のエッセイとは違って面白い。詩人で、小説家である彼女らしい文体だ。まるで詩のような文体と、なんでもない身辺雑記が混在し、ところどころは独りよがりの日記みたいだったりもする。

 最初は、こんなのを読んでも時間つぶしにもならないなぁ、と思ったのだが、読んでるうちにこのどうでもいいタッチがなんだか心地よくなり、でも、ずっとそのまま読んでも、なんの意味もないから、少し読んではやめて、他のことをして、でも、また手持ち無沙汰になると、ついつい手にして、続きを読む、という風にしてしまい、何だかわからないうちに、今日1日で読み終えてしまう。そんなつもりはなかったのだが。

 癖になる、というわけでもないのだが。読み終えても、なんにも残らない。何を読んだのかも忘れる。だが、この何とも言い難い心地よさ。それって、彼女の最初の小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』を読んだ時の感じに近いかも。詩集である『先端で、さすわ さされるわそらええわ』はあまり好きではなかったけど、今回のこのエッセイが詩集だと言われたなら、けっこう好きかも、と言える気がする。

 どうでもいいことを、どうでもいいまま、なんら読者に伝えようとするでもなく、自分の心の赴くままに書く。長い文も短い文もある。気分次第だ。たぶん。1文がかなり長くて、文体に整合性がない、場合もある。お構いなしである。これが連載されたものだなんて、驚きだ。自分の生理に従順で、感覚的。心情告白や、抽象的なものもあり、言いたいことが明確にならないことも。でも、本人は気にもしない。読んでる方も同じ。彼女がこれでいいのなら、僕もこれで構わない。そんな感じだ。

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