この手の青春映画には(さすがに)もうあまり食指はそそられないのだけど、監督が監督が『百瀬、こっちを向いて。』の耶雲哉治だから見ることにした。でも、さすがにもう劇場では見ない。一時期キラキラ青春映画がブームになった、もちろんそれ以前だって高校生を主人公にした少女漫画を原作にした映画は多数作られている。若手俳優の登竜門だ。安い製作費で、そこそこの収益を上げられる貴重なジャンルである。ここからアイドルだけではなく、優れた監督も多数輩出している。相米慎二のデビュー作『翔んだカップル』もそうだ。デビュー作以来鳴かず飛ばずの耶雲哉治である。そろそろ結果を出してくれるのではないかと、今回に少し期待したのだけど。
森七菜と北村北斗が主演した。主人公は高校生ではなく、20歳の大学生だけど、これもよくあるジャンル映画だろう。血のつながらない同い年の姉弟がお互いに反発しあいながらも、実は好き同士で、というパターン。そこに、派手な女子高生が絡んでくるのだけど、その女の子は実は変装した姉で、そんな彼女を彼が好きになる、とかいうような荒唐無稽なお話で、バカバカしくて見ていられないような設定と展開だ。ありえないだろ、とか、さすがに気づくだろ、とか、突っ込みどころだけは満載だけど、それでもなんとか見ていられるのは、作り手がふざけずに、この設定の中でのリアルをぎりぎりでキープしようと奮闘しているからだ。主人公を演じたふたりも無理せず、自然体で受け入れて演じている。オーバーアクトすると最悪の映画にしかならないところを、なんとか抑えているから、耐えられる。
だからラストの怒濤の展開も、納得だ。ふたりの想いがちゃんと伝わる。そこからの障害のないスムーズなゴールインまでの短い描写(なんとそのほとんどがエンドクレジットで描かれていく)も微笑ましい。ふたりのファンにとってはたまらなく幸福なラストだろう。こういうアイドル映画なら今の時代でもOKだ。好意的に見ている人をいい気分にさせてくれる映画は必要だと思う。ただ、もう一押しが欲しい。耶雲哉治の次回作に期待しよう。