フランスの女優シャルロット・ゲンズブールが初監督を務め、母ジェーン・バーキンの真実に迫ったドキュメンタリー。有名な大女優であり、歌手でもある母は近くにいるはずなのに遠い。一緒に暮らしていなかった時間が長い。だから憧れの存在でもある。父親であるセルジュ・ゲンズブールの元で育ち、小さな頃から女優として活躍したシャルロットは40代になり、子どもを育てながら仕事も精力的にこなしてきた。今初めて真正面から母と向き合う。2018年、日本でのツアーに同行したところからカメラを回して、母親と対峙する姿をカメラに収める。初めての映画作り、監督業に挑む。
プライベート・フィルムのような描写も挟みながら、今までは面と向かって話せなかったことも聞き出す。ジェーン・バーキン、母。彼女は自分にとって何なのか。
ただこれがいささか物足りないのはあまりに個人的なことに終始して映画としての広がりに欠けるからだろう。ある種の普遍につながるものが欲しい。母と娘の話なら、原田美枝子が自身の母を主人公にして監督したドキュメンタリー映画『女優原田ヒサ子』(短編だけど)がある。これはあれには及ばない。