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映画・演劇のレビュー

『バブル』

2022-05-01 10:51:59 | 映画

5月13日の劇場公開にさきがけてネットフリックスでの配信がスタートした。なんだか不思議な話だ。映画は「配信で見るもの」と何の疑いもなく思う人がこれからは大多数になる時代がやってくるのか。時には「劇場でも見ることが可能」なんていう。なんだか寂しい。でも、今回みたいに配信で先行公開されたらついつい見てしまう。

映画館で予告編を見た時から、これは凄いと思った。カメラが彼らを追う。彼らはそこで自由自在に動き回り、水に浮かぶ東京の街を浮遊する。こんなにも人間が身軽に、走り、飛び、舞う。倒れたビルからビルへと、その壊れた狭い空間や空中を。彼らのなめらかな動きは見ていて気持ちがいい。(これは大きなスクリーンで見たほうが心地よいだろうとは思ったのだが、ついつい誘惑に駆られてTVサイズで見てしまった)

お話はたわいない。バブルが降ってきて重力が壊れ水没した東京の街は危険区域に指定され、本来なら人が住めない。だが、そこで不法滞在し、自由に暮らす若者たちがいる。彼らは船の上で暮らし、廃墟となり機能しない都市の残骸を自由に駆け抜ける。チームを作り、より早く危険な区域を通り抜けフラッグにたどり着くゲーム(レース)をして暮らしている。

あるレース・チームのエースである青年が重力が歪む海へ落下した。そんな彼を助けたのはバブルの中からやってきた少女だ。彼女は彼に恋をする。これは『人魚姫』に憧れた少女と青年のラブストーリーだ。

ただ、お話自体はあまりに陳腐で退屈する。壊れた世界の意味、ここで生きること、描くべきものが明確にならないまま、よくあるお話に収斂される。しかも、世界観の確立がなされていないから、よくわからないし、結果、お話の世界にも引き込まれない。表層的なドラマは紋切り型のパターンになる。ビジュアルが素晴らしいだけにその世界が生かされなかったのは残念だ。


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