なんと今回は人形劇である。人形劇団を舞台にしたバックステージものなのだが、劇中劇として演じられる人形劇の比重が大きく、全体のバランスを欠くほどなのが凄い。そのくせわかりやすい2重構造にはしない。両者のお話は関係ありそうでなさそうなもどかしさを提示する。もちろん両者は微妙なバランスで確かにリンクはしている。
いなくなった王子様を探す3人の仲間たちのお話は、自分たちの居場所を巡る劇団内部のお話と重なっていく。こちらは帰ってきた劇団員をどう迎えるか、というお話。劇団の中心になる書き手の不在。帰ってきた男が今進行中の劇の続きを書くことになる。お話がいびつに展開していく。
だが、その劇の劇中劇になかで答えが出るわけではない。実際の内紛を描く部分でも答えなんか出ない。では、芝居はどこに行き着くのか。彼らは何を求めてここにいるのか。
作、演出の岩橋さんは、この単純そうな芝居を、わかりやすいお話にはしない。彼らの関係性のあやふやさも含めて、なんだか安定のない不安感をあおる。人形劇で、王子様と従者たちの旅というパッケージングの単純さとはうらはらの微妙なすれ違い、そこから集団が壊滅していくまでが淡々としたタッチで綴られていく。このつかみどころのなさはいつもながらの岩橋ワールドだ。