森見登美彦原作のアニメーション映画だ。森見作品は何故か、たくさんアニメ化されているのに、実写はされてない。つかみどころのなさが原因なのだろうか。彼の描く摩訶不思議なファンタジーはリアルよりもアニメに合うということか。
ただ、今回のこの作品を僕はあまり好きではない。原作もあまり買わない。読んだとき、なんだかなぁ、と思った。でも、アニメ映画として作ると、もしかしたら、面白くなるかも、と期待した。森見臭が希薄な作品だから、監督の個性を出しやすいかもしれないと。
だが、残念ながら原作と同じようにこの映画もなんだか不発。思ったほどには面白くない。このなんとも言いがたい不思議な空間を一つの世界として提示し切れていない。中途半端なのだ。お姉さんがペンギンを作り、この世界を作っている。でも、彼女は世界の支配者ではない。ただ、なんとなくペンギンを作ってしまい、この不思議な場所を歪めていく。というか、彼女が何の変哲もないはずのこの場所をいびつな場所に変えているのだが。ペンギンたちを量産してここに何を作ろうとしたのか。彼女に憧れる少年はお姉さんの不思議を解き明かすと同時にペンギンの謎も解き明かすのだが、それが何なのか、よくわからない。
実はこの映画はそんなわけのわからなさを愉しむ映画なのだ。荒唐無稽だけど、そこがリアル。理屈で受け止めるほうが間違っている。そのわけのわからなさを受け入れてその謎に向かっていく少年たちと一緒に、この世の中には不思議が満ちあふれているということを探検していけばいい。そこで、理屈をこね回しては、不思議は逃げていく。そんなこと、わかっているともりだったのだが、実はこの映画に乗り切れなかったことは事実で、そこはもうどうしようもない。そんなこと、この文の一番最初にも書いたのだけど、返す返すそこが残念なのだ。今の僕はこの映画を無邪気に楽しめない。