シリーズの第9作目。前作はスピンオフだった(短編集だった)ので、これは久々の新作となる。でも、変わらない。というか、その変わらなさがこの作品の魅力だ。
家族はどんどん増えていき、もう収拾がつかないほどだ。でも、友達の輪は広がり続ける。どんどん新しい人たちを受け入れるからそうなる。でも、それこそがこの家族なのだ。閉じることなく、開かれた関係性。しかも、子どもたちはどんどん成長していく。そんな成長を楽しみにする。
今回は、研人が高校受験を迎え、高校には行かずロンドンに行く、と言い出す話が最後にくる。これはちょっとドラマチックな展開だが、それでも変わらない。いつものように4話からなる。秋から始まり、夏までの1年間のスケッチだ。パターンを踏襲する。でも、そこにほんの少し変化がある。そんな些細な変化を楽しむ。ちょっとした事件よりも、そのことを通して、彼らが交わす言葉や遣り取り、それがいい。大家族であることをこんなにも羨ましいと思うことはない。別段何もなくていい。ただ、家族がいて、変わらない日常がある。それだけで、幸せだ。
ここに出てくる人たちはみんな特別な存在ではない。どこにでもいるような普通の人たちだ。だが、彼らはそれぞれ自分の場所でしっかり生きている。自分の領域を持つ。それが彼らを特別な存在にする。もちろん有名なロックミュージシャンもいる。IT業界の風雲児も、イギリス人の画家も。刑事や神主、もちろん会社員やら。でも、有名無名なんか、どうでもいい。
東京の下町にある古本屋を舞台にして、彼らの織りなす日々を描く。朝の食事なんか毎日が戦争だ。(いつも、そこから始まる)でも、楽しい。今回も、また、そんな彼らのお宅にお邪魔させていただいた気分だ。それだけで、リフレッシュできる。この家をみんなが訪れたくなる気分がわかる。ここにいるだけで、ほっとするのだ。