シュワルツエネッガーの最新作である。政治家を辞めて、映画界に復帰してから、少しずつ、いろんな役に挑戦している。復帰第1作の『ラストスタンド』は、楽しかった。ゲスト出演で『エクスペンダブルス』に呼ばれて、その流れでスタローンとダブル主演の『大脱出』にも出た。だが、今回はこれまでの軽い映画から脱して、シリアスで、重量級のアクション映画に挑む。
これは絶対に見なくては、と期待した。それにしても、やはりアクションなのだ。そこがうれしい。コメディには行かない。一時期はいろんなタイプの映画に挑戦するため、コメディ路線に流れたこともあったけど、年を取って、もうこれからは先が長くはない。そんな中で、やるのは、一番自分が好きなことだろう。ヒューマンドラマなんかには行かないし、彼の場合は行けない。あくまでも、アクションスターなのだ。
だから、アクション映画の中での冒険に挑む。実に彼らしいではないか。しかし、それだけではダメだ。この映画はアクション・ミステリーとでも呼ぶべき作品なのだが、謎解きの部分がつまらない。ドキドキしないし。最強のはずの9人の特殊部隊のメンバーがひとりひとり殺されていく。誰が何のために。女刑事とシュワちゃんがその謎に挑む。
話の骨格は単純だ。それを惨たらしい殺しの描写で見せていく。凄惨なタッチ。ドキュメンタリータッチの見せ方。それがどこに行きつくのか、というのが興味の焦点なのだが、あまりにあっけないオチに驚く。こんな程度の話だったのなら、そこまでも重量級のタッチは何だったのだ、と思う。『エンド・オブ・ウォッチ』のデヴィッド・エアー監督を起用したのが生かされない。台本があまりに杜撰すぎたからだ。スタイルが仰々しいのに、中身がスカスカ。
せっかくの野心作だったはずが、監督にとってもシュワちゃんにとって、誰にとっても意味がない作品になったのはとても残念だ。冒頭の女がリンチされ、殺される映像を見ながら泣くシュワちゃんの姿からどういう展開を見せるか楽しみなったのに、がっかり。