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映画・演劇のレビュー

『成功補習班』

2023-09-15 17:47:00 | 映画
台湾全土ロードショーに先駆けて15日からの先行公開初日に見に行く。最速上映。もちろん日本公開はいつになるかわからないし、公開しないかも知れない。

高雄の内惟藝術中心で見る。第1回の上映だから世界最速上映だ。凄い。(実はそうではないけど。台湾各地でこの先行上映がなされていたことを後で知る。そりゃそうだろう。だが、この瞬間僕は知らない)しかも、まさかのことだが、ここでは観客は僕たちふたりだけだった。なんと貸し切り上映である。(あり得ないことだ)補習塾が舞台になるから受験の話かと思ったが、まるで違う。軽いタッチの安易な青春コメディ映画かも、と思って見始めたのだが、それも違う。

これが信じられないくらいに素晴らしい映画だった。途中からまさかの展開をするのだ。最後はもう涙が止まらない。映画を見てこんなに泣いたのは久しぶりだ。バランス感覚が抜群だから、ふざけたエピソードも空回りしない。シリアスな話だが、へんに重くならない。吉川晃司の『モニカ』を使うシーンも素晴らしい。(懐かしい!)

最初は現代からスタートして、高校生時代に戻るというパターン。よくある男の子3人組の悪ガキのドタバタ騒動から始まる。だが、途中からまさかの転調を遂げる。シリアスになるばかりではなく、LGBTQを扱う映画になる。しかも、無理なく自然に。

補習塾の先生が、同性愛者で自らの性状を隠すことなく、彼らと付き合う。3人はそんな先生に導かれるように、純粋に相手を愛することと向き合うことになる。男だとか女だとか関係ない。3人のマドンナとなる女の子と4人。男女の違いは意に介さない。ラブストーリーとしての側面も後景に沈んで、映画は自分らしく生きることを極めていく。性転換する男の子が両親と和解するエピソードもとてもよかった。最初と最後の現在のシーンに彼が登場しないのも納得いく。彼のその後を敢えて見せないけど、きっとハッピーエンドになる。エイズで亡くなっていく先生のことも含めて、人生は素晴らしいと思える。ラストは葬式と結婚式。怒濤のクライマックス連打。

ラストクレジットの学習塾でのミュージカルシーンも素晴らしい。笑って、幸せになり、涙が出てくる。塾に4人で殴り込みをかけるあの奇跡のシーンも含めて、『時をかける少女』のラストに負けない凄さ。絵に描いたような青春映画のルックスからは想像も出来ない映画になるのだ。あらゆる意味で、想像のはるか斜め上をいく大傑作。

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