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映画・演劇のレビュー

川端康成『掌の小説』②

2023-09-16 23:21:00 | その他

後半戦に入った。まだまだ続く。ゾンビの群れのように溢れかえる妻たち。彼女たちは夫の帰りを待ち、駅にやって来た。だが、夫にとっては恐怖以外の何者でもない。しかもそこには妻ではない女までいる。かつての愛人だ。(『時雨の駅』)

 
家族の恐怖を描く連作が続く。妻だけではない。妹や弟、終いには犬まで。サイフを盗まれたり、質屋に行ってきたり。妻が踊子とか、なんなんだこれは、という作品が並ぶ。悪夢の連鎖は際限なく続く。
 
昔話のような語りで自殺を描く『雪隠成仏』、離婚によって二つの家を行き来する『離婚の子』。12、3で悪女の行為をする踊子や、嫉妬から顕微鏡や望遠鏡を使っての殺人。もう止まるところを知らない。
 
終盤に入った。女性を主人公にした優しいタッチの話が続く。戦争を背景にした作品も。悪くないが、少し物足りない。やはり刺激的な話がいい。ラストは再びエグい話もあるけど、幻想的な話で締める。
 
『不死』の老人と若い娘。ふたりは60も年が違うけど、恋人同士。幼なじみ。若くして死んだ彼女とまだ生きている彼。『白馬』『雪』『めずらしい人』の3連発で幕を閉じる。
 
ようやくさっき読了した。6日間。旅の間、毎日20篇のペースでゆっくり読んでいけた。それにしてもよく読んだものだ。

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