5編からなる短編連作。微妙な人と人との関係性を軸にして展開するお話はなかなか面白い。最初の姉と妹のあやうい関係を描く『小生意気リゲット』のやさしいオチは良かった。両親を失いふたりきりの家族になったふたりが、姉の就職を機に同居する。でも、しばらく離れていたふたりの関係は、ぎくしゃくしてうまくいかない。妹との関係をどう保つのか。揺れる姉の心が描かれる。
ほかの4篇も基本は同じパターンだ。ただ、オチをどこまでも隠して話を進めるから、いささか読みにくい。そうすることで、緊張感を持続できたならいいけど、そうでもない。この作者は推理小説の書き手らしいから、こういうスタイルを遵守しようとするのだろうが、別にそこに拘ることはない。ここで描かれるのは人と人との機微なのだ。お話の仕掛けよりも、お互いのかかわり方を見せることのほうが大事ではないか。少女の心をもっと前面に押し出した青春小説に徹したほうが僕は好きだが、そこは好みの問題かもしれない。