いくらなんでもこんなタイトルの映画はあり得ない、と思う。原作漫画がこのタイトルなのでそのままこのタイトルでGOサインを出したのだろうが、これはかなりの冒険なのではないか。僕にはわからないけど、常識的に考えると、インパクトは凄いけど、商品として、タイトルがこんなに長いとなかなか覚えられないし、「奥田民生」なんていう固有名詞を映画のタイトルに入れるのは、凄すぎる。略称である『民生ボーイと狂わせガール』のほうが映画のタイトルとしてはノーマルだろう。でも、製作者側は敢えてこれで行く、という選択をした。なかなかの英断ではないか。
タイトルは長いけど、映画は実に軽い。薄っぺらで、バカバカしい。こんなボーイ(というけど、妻夫木聡だ!)ないわぁ、と思う。さらにはその上を行くのが水原希子の狂わせガール。こんな困った女がいたら恐くて普通なら誰も近づかないはず。でも、そこは映画なので、彼は彼女になぜか、急接近。
まぁ、ボーイ・ミーツ・ガールのラブストーリーの典型なのだけど、この危なっかしい恋物語はそこからどんどん暴走する。実に心地のいい暴走だ。ただ、主人公の気持ちはとてもよくわかるから、バカじゃないか、と思いつつも、応援してしまうし、感情移入できる。おしゃれで、楽しい映画で、テンポもいい。情けない妻夫木クンが、とんでもない彼女に振り回されていくさまが快調に綴られていく。実に楽しい。
30代の男子が、新しい職場での仕事に邁進し、ちょっとフライングもしながら、頑張る様子が軽やかに描かれ、そこに恋もついてくる。「恋と仕事」を両立させて、人生絶好調って感じ。でも、そこはそれ。いろんな問題が満載。上手くいくわけない。そんな展開になる。お決まりのパターンを踏襲しながらも、この映画に引き込まれていくのは、この映画が青春のある時期を、その想いを、ちゃんと描けてあるからだろう。恥ずかしいくらいにピュアで、純粋。(同じこと2度言ってるよ!)なんだか懐かしい気分にすらさせられる映画なのだ。恋愛してる男の子はバカ。