最初はこんな無茶苦茶な設定で話を作って大丈夫か、とドキドキしながら読み始めた。あり得ない。だけどだんだんこの状況がなんだか素敵だと思う。従来の価値観に縛られていただけかも、と思う。そんなあり得ないことから始まる。
伊麻と絹香。当たり前だったことに異議を唱える。ふたりの、そしてふたつの家庭を交互に描いていく。やがてふたつは重なり合い、新しい次元に突入していく。
3人の恋人を持ち、彼らと同居している40代のシングルマザーで画家の伊麻(とそのひとり娘、千夏)の話と、伊麻の高校時代の友人だった勝手な夫を持つ専業主婦絹香の話が描かれていく。
だが、高校生になった千夏の恋人との話が前面に出てきたところからお話について行きにくくなる。千夏の彼氏からの束縛がエスカレートしていく。彼の性行為への過激な誘いは高校生男子の性衝動かもしれないが、それだけではない。だが、彼の行動には恐怖を感じる。さらにはもうひとつの話である絹香の夫の不倫の話から始まる話。絹香の夫の家族に対する対応にイライラさせられる。
どちらかのエピソードもあまりにドロドロ過ぎて引いた。せめてこれがコメディタッチなら寓話としても読めるのだが、シリアスで押し通すからキツい。だけど、逃げ場を拒絶するで、新しい関係性なんていうきれいごとではないさまざまな問題が明らかになっていく。そして辿り着く結末は。
結婚について、子育てについて、夫婦関係、家族の在り方。重なり合う家庭の問題に対してひとつの答えを提起する。確かに凄い作品である。あまり好きじゃないけど。