幽霊の話を映画にして、ラブストーリーを作る。そのパターンは『ゴースト NYの幻』が有名だけど、これも同じパターン。もちろん味付けはホラーではない。今放映中のTVドラマ『100万回言えばよかった』もそう。仕掛けが上手くいくと面白い映画になるはず。まるで期待はしないで見たが、なかなかいい。これは低予算の小品だが思いがけない拾い物の1作だ。
この映画は、シンプルな話でほとんどふたり芝居。恋人が出ていった男のところに実はずっとこの部屋にいたという幽霊が現れてくる。彼女はここに以前住んでいたらしい。そして、ここで死んだ。理由はわからない。若くて綺麗な女の子だ。最初は戸惑うが徐々に慣れてくる。彼女に心惹かれていくが、相手は幽霊だし、触れることもできない。コメディから始まり、切ない恋に到る。ある種定番だが悪くはない。
監督は若い女性監督、高橋名月。彼女がメガホンを取り、同じく女性監督である穐山茉由が共同で脚本を担当した。ふたりで、さらりとこのふたりの淡い恋をさわやかに描いた。ヒロインの幽霊は絵に描いたように白い服を着て現れる。貞子みたいだけど怖くない。足もある。「乃木坂46」の久保史緒里が演じた。
ふたりがだんだん親しくなる過程も丁寧に描き気持ちがいい。部屋から出られない彼女をなんとかして街に連れ出しデートするシーンがクライマックスだ。ここでのご都合主義の安易な展開も許していい。あくまでも心地よいささやかな映画になればそれが一番だというのが作り手に姿勢。別れは突然やってくるというのもお約束。そして『時をかける少女』と同じようなまさかの再会の予感も含めて。大林映画でおなじみの尾道を舞台にした同じようなファンタジー映画だ。ただ大林さんよりあっさりしているのは時代の違いか、技術力の差か。完成度は決して高くはないけど、気持ちいい作品に仕上がっているのがいい。