これはたまたま手にした本だ。金継ぎを取り上げて、中学生を主人公にするなんて、なかなかないだろう。地味だけど気になるから借りた。やはり当たりだ。とてもいい作品だった。
今まで僕はこの作家を知らなかったが、児童文学の世界で有名な人みたい。たくさんの著作があり、そのほとんどが中学生を主人公にしているみたいだ。あの年頃の不安定な心情をさりげなく、そして繊細に描くのが身上なのだろう。この1作から十分わかる。読み始めてすぐにこれはいいなと感心した。図書館では一応YA小説に分類されていたが、このレベルなら一般小説として十分通用するだろう。(まぁ、そんな分類には意味はないけど)読みやすいし、ゆっくりしたタッチでじんわりと胸に沁みる。
主人公の3人が出逢うまでが長いのもいい。(そこはこのタイトルだから確信犯だけど。)まず別々のところで(同じ中学校だけど)生きるふたりを丁寧に見せていく。京都を舞台にして、中学生の男女の日々を描いた。それぞれ悩みを抱え鬱屈した毎日を過ごしている。他人から見たら小さな事かもしれないけど本人にとっては大きな問題で心を痛めている。クラスメイトからのイジメ、母の再婚からの転校、新しい生活への違和感。
そんな2人の話を交互に描き、ようやく2人が出逢って、さらには3人目の存在が明らかになるところで、お話は終わる。金継ぎがふたりを引き合わせる。さらにはもうひとりも。これはそんな3人のお話が始まるところまでのお話だ。金継ぎが彼らを引き合わせる。