酒井麻衣監督作品。初めて彼女の映画を見たのだが、確信犯的で清々しい。とことん嘘くさいのに、それが嫌味ではない。もちろんこんな高校はないし、主人公のふたりも高2には見えないけど、構わない。きれいごとをきれいに描いて、何が悪いと居直るような映画だ。
作り事を丁寧に作り上げたことが成功につながる。嘘が美しい。描写だけでなくお話も含めて。学校の屋上は学園ドラマの定番スポットだが、それを悪びれることなくここまで大胆に取り上げたのは初めてではないか。主人公はここを自分のアトリエにしてしまっている。隠れ家だけど、公認の秘密の場所。そんなこと普通ならあり得ないけど、普通じゃないからあり得ていい。最後には屋上をキャンバスにしてしまうし。
主人公ふたりの設定や、その「まさかの幼なじみ」も納得する。ここまでくるともう何をしても構わない。許す。そんな気にさせられる映画なのだ。クライマックスはふたりで夜の学校で朝まで過ごす、のかと思ったら、母からの電話1本でおとなしく帰ったなんて偉い。一番は朝焼けと言ってたくせにそれをふたりで見ないで帰宅する。タイトルに偽りありじやん、と思うけど笑える。まぁ、夜明けを一緒に見る、とはタイトルで言ってないけど。
泣かせる映画というわけではなく、でも泣かされる。彼の一途な想い。彼女の頑ななこだわり。それが素敵だと思う。
マスクをしていないとまともに息もできない女の子。でも、いつも笑顔で(マスクをしてるけど)明るい。親の言うことをちゃんと聞く。だけど、それはほんとの彼女ではない。ほんとは他人の顔色ばかりを気にかけておどおどしている。そんな彼女を嫌いだという男の子。17歳。そんなふたりの物語。
描かれる学校もクラスメイトも、きれいごと。家族にも心を開けない彼女の家庭もきれいごと。絵に描いたような世界が描かれる。そんな世界で展開する物語。彼女を彼は乱暴に、だけどしっかり受け止める。彼らふたりの気持ちは絵空事ではなく真実である。だから納得する。これはそんな映画だ。
同じ原作者、汐見夏衛の小説の映画化作品『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が今大ヒット公開中だが、なんだが甘いものみたいで見る気はなかったけど、これを見てそちらも少し気になってきた。
まず彼女の小説を一冊読んでみようと思い,最新刊『傷だらけの僕たちは、それでもいつか光をみつける』を借りてきた。今から読む。